アメリカの作家J.D.サリンジャーの名を一躍有名にした長編小説。1951年刊。成績不良で退学させられた17歳の少年が,前年のクリスマス休暇に学校を出てからニューヨーク市の自宅に帰るまでになめた体験を語るという形式をとった現代のピカレスク小説である。純潔いちずな少年の魂と複雑巧妙に構成されたおとなの世界の衝突という伝統的パターンをふまえながら,ホールデン・コールフィールドHolden Caulfieldという,おそらくは文学史に長くその名を残すであろう魅力的な主人公の姿をみごとに造形している。そのうえ,彼の語る語り口がまた50年代のハイティーンの口ぶりを的確に写していると賞賛される,独特の個性をもった文体をなし,今日も人気は衰えず,彼の口からいささか誇張されてほとばしる俗語,卑語の頻出に顰蹙(ひんしゆく)してこれを禁書にする学校や地方がある反面,ティーン・エージャーの心理研究の教材に利用している学校もあるくらいである。
執筆者:野崎 孝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
アメリカの作家サリンジャーの中編小説。1951年刊。成績不良で高校を退学になったホールデンが、ニューヨークに戻りながら両親のもとに帰りにくいまま過ごす2日間のことが、彼自身の口から語られる。ライ麦畑で遊んでいる子供たちが危ない崖(がけ)から落ちそうになったとき、つかまえてやる者になりたいと語る優しさと、周囲の人物の偽善を鋭く見抜く厳しさとをもつホールデンだが、出会う人物のほとんどが大人の世界の「いんちき」に染まっていて絶望し、片田舎(いなか)へ逃げ込もうと決意する。しかし幼い妹のフィービーの無邪気な愛に救われ、広い人間愛に目覚める。少年らしい感覚と痛快な語り口で若者に迎えられ圧倒的人気をよんだ。
[田中啓史]
『野崎孝訳『ライ麦畑でつかまえて』(1964・白水社)』
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