翻訳|dropout
アメリカ合衆国では学士課程の退学率が高く,卒業して学位を取得する学生の比率(卒業率。通常6年間での卒業率が使われる)は,その大学の教育の成功を示す指標として重視される。学生の退学は大学の財源にも関わる問題であり,各大学でさまざまな学生支援を通して退学率を低下させるべく努力がなされている。退学について研究するヴィンセント・ティントによれば,退学には多様な学生による多様な理由があり,要因が複合的である場合も多い。ティントによれば,学習についていけず退学するのは退学者の3割程度である。経済面が理由となる場合には,単に授業料が払えないというだけでなく,授業料を賄うために就労することで就学の継続が困難となる場合もある。在学によるコストに見合う利益が得られるか否かを考えた結果,退学に至る学生もいる。一方,はじめから学位取得を目標としない学生もおり,この場合,「dropout」ではなく,「stopout」と捉えるべきとされる。学生が大学に在学し続ける上では,入学時の能力以上に入学後の学習・生活経験が重要な意味を持つとされる。
著者: 福留東土
参考文献: Tinto, Vincent, Leaving College: Rethinking the Causes and Cures of Student Attrition. 2nd ed., Chicago: University of Chicago Press, 1994.
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報
児童・生徒・学生が在学する学校で,卒業以前に在学関係を終了させる行為をいう。一般には,懲戒処分(懲戒)としての退学をさす場合が多いが,自主退学や授業料の滞納による退学もある。公立義務教育諸学校においては,子どもの教育を受ける権利を保障する観点(義務教育)から,退学処分を行うことはできない(学校教育法施行規則13条3項)。しかし同じく義務教育の場合であっても,国立と私立の学校では,退学処分は認められている。その理由は,退学後も公立学校に就学することが認められるからである。懲戒としての退学処分は,(1)性行不良で改善の見込みがないと認められる者,(2)学力劣等で成業の見込みがないと認められる者,(3)正当な理由がなくて出席つねでない者,(4)学校の秩序を乱し,その他学生または生徒としての本分に反した者,に対して校長(大学にあっては,学長の委任を受けた学部長を含む)がこれを行うことができる。
執筆者:浪本 勝年
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
学校に在学する学生・生徒等が、その学校の全課程を修了して卒業する前に、その学生・生徒等としての身分を失うことをいう。退学を許可または命令する権限は、高等学校では校長、大学においては教授会の議を経て学長に属する(学校教育法施行規則26条、94条、144条)。退学には、自己都合による退学、懲戒処分としての退学、また授業料滞納による退学がある。
公立の義務教育諸学校における退学には次のような場合がある。(1)区域外就学をしていた児童生徒がその学校を退学して住所地の学校に就学する場合、(2)在学中の学齢児童生徒が、視覚障害者等になり、退学して特別支援学校に就学する場合、(3)児童自立支援施設・少年院への入院など就学義務の猶予・免除を受けた場合、(4)外国にある学校などに入るために退学する場合。
[下村哲夫・窪田眞二]
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