リデル・ハート(読み)リデルハート

百科事典マイペディア 「リデル・ハート」の意味・わかりやすい解説

リデル・ハート

英国の軍事評論家。パリ生れ。ケンブリッジ大学に学び,第1次大戦に歩兵隊将校として従軍負傷,1927年陸軍大尉で退役し,軍事研究に従事。1925年−1935年《デーリー・テレグラフ》,1935年−1939年《タイムズ》の軍事記者,論説顧問となり,空軍力の開発と機甲化された部隊の重要性を強調,機甲戦の創始者としても知られる。その構想はむしろドイツ陸軍に取り入れられ,第2次大戦初期のドイツ陸軍の電撃作戦を成功させた。1937年−1938年陸軍大臣顧問となり,英国陸軍の近代化,機械化に貢献。1939年の《英国の防衛》は英国の戦略決定に大きな影響を与えた。戦後も軍事研究の分野で活躍し,30冊以上の著作がある。おもな著書に《間接アプローチの戦略》(1929年),《第1次世界大戦史》(1934年),《第2次世界大戦史》(1970年)などがある。1966年ナイト爵に叙された。

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改訂新版 世界大百科事典 「リデル・ハート」の意味・わかりやすい解説

リデル・ハート
Basil Henry Liddell Hart
生没年:1895-1970

イギリスの軍事評論家。第1次世界大戦に従軍し負傷,1927年陸軍大尉で退役。《デーリー・テレグラフ》《タイムズ》の軍事記者,論説顧問を務め,空軍力と戦車戦に関する多くの軍事理論を発表し,機甲戦の創始者として有名。彼の構想は自国陸軍よりもドイツ陸軍にうけいれられ,第2次世界大戦初期,ドイツ陸軍の電撃戦成功の基礎となった。37-38年陸軍大臣顧問となり,開戦直前のイギリス陸軍の近代化,機械化に参画した。戦時中および戦後は著作活動に専念し,近代戦争理論の発展に貢献した。おもな著書に《間接アプローチの戦略》(1929),《第1次世界大戦史》(1934),《第2次世界大戦史》(1970)などがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「リデル・ハート」の意味・わかりやすい解説

リデル・ハート
りでるはーと
Basil Henry Liddell Hart
(1895―1970)

イギリスの戦略研究家、軍事史家。ケンブリッジ大学を卒業後、陸軍に入り第一次世界大戦に従軍。1927年に退役して、『ザ・タイムズ』に軍事記事を執筆、戦車を中心とする機械化部隊や空軍の重要性を強調、第二次世界大戦におけるイギリスの戦略に大きな影響を与えた。戦後も核戦争問題などで積極的発言を行う一方、『第二次世界大戦史』(1970)をまとめた。

[木畑洋一]

『上村達雄訳『第二次世界大戦』(1978・フジ出版)』『後藤冨雄訳『第一次世界大戦』(1980・原書房)』

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世界大百科事典(旧版)内のリデル・ハートの言及

【機甲部隊】より

…その後集団用法の採用,機動力の向上に努めた連合軍は戦車によって戦況の打開に成功した。第1次世界大戦後,イギリスのJ.F.C.フラー,B.リデル・ハートらは敵の指揮中枢を一挙に打撃して勝敗を決する機甲部隊の創設を提唱したが,現実にはドイツにおいてA.ヒトラーの支持を得たH.グーデリアンがこれを最初に建設した。第2次世界大戦においてこの機甲部隊が急降下爆撃機と連係して電撃戦を実施し成果をおさめた。…

【戦略・戦術】より

…【井本 熊男】
【国家戦略】
 国家の安全を保障し,国家政策を遂行するため,平・戦時を通じて最も効率的な方法で,人的・物的資源を総合的に準備,計画,運用する方策を国家戦略といい,これを受けて,国家の安全を確保する方法を軍事的に追求することを軍事戦略といっている。イギリスの戦略家B.リデル・ハートは,長期的な視野から,国家の目標である〈よりよき平和〉を達成するため,国家の政治的・軍事的・経済的・心理的諸力を発展させ,これを活用する方策を〈大戦略grand strategy〉と言った。またフランスの将軍ボーフルAndré Beaufre(1902‐75)は,これとほぼ同じ概念を〈全体戦略〉と呼んだが,いずれも国家戦略と同義語とみてよいであろう。…

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