日本大百科全書(ニッポニカ) 「市来」の意味・わかりやすい解説
市来
いちき
鹿児島県西部、日置郡(ひおきぐん)にあった旧町名(市来町(ちょう))。現在はいちき串木野(くしきの)市の南部を占める。旧市来町は1930年(昭和5)西市来村が町制施行と同時に市来町と改称。2005年(平成17)串木野市と合併、いちき串木野市となった。旧町域は薩摩半島(さつまはんとう)北西部に位置し、小規模な沖積平野のほかは、大部分がシラス台地。東シナ海に面する海岸は吹上浜(ふきあげはま)の北端で、砂丘が続く。JR鹿児島本線が通じる。歴史が古く、川上貝塚では縄文時代の市来式土器を出土。平安時代には市来院(倉院)があった。江戸時代から明治にかけては宿場町、港町として栄え、経済の一大中心地であったが、鉄道の開通など交通体系の変化によって衰微した。焼酎(しょうちゅう)は伝統のある特産品。鹿児島市への通勤者が増加している。重要無形民俗文化財に指定されている七夕踊(たなばたおどり)は、毎年8月に行われる農民の素朴な伝統芸能である。
[平岡昭利]
『『市来町郷土誌』(1982・市来町)』