翻訳|logistics
ロジスティクスとは、元来、軍事用語であり、軍隊の装備品、糧食などの軍事品の調達、供給に関する軍事科学である兵站(へいたん)術、およびその具体的運営を意味している。この技術を企業経営における物資流動に適用したものが、ビジネス・ロジスティクスである。そして、現在ではこれが産業界全体に普及するにしたがい、単にロジスティクスとよぶようになっている。その定義については定まった見解はないが、おおむね次のような意味で使われている。生産者から消費者までの商品の物理的(空間的・時間的)移動である物的流通(川下物流)に、さらに原材料や仕入れ商品の調達物流(川上物流)および半製品や商品の社内移動である社内物流を加えたもので構成されると考えられている。ときには、これら物流を動脈物流として一括し、さらに返品や空容器の回収物流や廃棄物処理のための廃棄物物流を加えて静脈物流とするものもある。この考え方にたつと企業を取り巻くすべての物資流動を含むことになる。さらに企業の経営戦略と密着し、生産、販売、流通を一体化し、関連する諸企業をも巻き込んだ供給連鎖(サプライチェーン・マネジメント、SCM)の主要な部分をも構成している。
1990年代の後半に、3PL(サードパーティ・ロジスティクスthird party logistics)という考え方がアメリカから導入された。サードパーティとは第三者のことであり、荷主と物流業者の間にたち荷主の物流システムの設計・運営・改善を図るロジスティクス業務をさしている。しかし、日本の場合には、第三者である専門業者としてよりも、従来の大手物流業者自身が3PL業務を行っていることが多い。
また、環境に対する国民意識の向上に対応して、グリーン・ロジスティクスという考え方も生まれている。これは物流に伴う環境破壊の防止を指向するロジスティクスである。たとえばトラック走行に伴う大気汚染・騒音を圧縮するための鉄道コンテナや船舶コンテナの利用、荷造り材料による廃棄物の圧縮など、ロジスティクス全体で発生する環境破壊要因を縮小しようとするものである。
日本経済のグローバル化に伴い日系企業の国際的展開が行われている。それに対応して、日系物流業者も欧米・アジア等を含む2国間、3国間のロジスティクスを展開するようになっている。
[野村 宏]
『湯浅和夫著『物流とロジスティクスの基本』(2009・日本実業出版社)』▽『齊藤実著『よくわかる物流業界』第3版(2010・日本実業出版社)』▽『中田信哉著『ロジスティクス入門』(日経文庫)』
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