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ローファイ・ミュージック ろーふぁいみゅーじっくlo-fi music

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ローファイ・ミュージック
ろーふぁいみゅーじっく
lo-fi music

1990年代初頭から中期にかけて主にアメリカに出現した、アンダーグラウンドなポップ・ミュージックの一ジャンル。意図的に安っぽい機材を用い、雑音や不明瞭なサウンドを取り入れつつシンプルな編成で演奏される。
 80年代後半、アメリカのアンダーグラウンド・ロック・シーンでは、ジャンクあるいはスカム(共にくず、かすの意)と呼ばれた、ノイジーなギター・サウンドと乱雑な曲構成を特徴とする音楽が出現した。これらのグループは後に正統的なロック・ミュージックに接近し、グランジと呼ばれるジャンルへと流れ込んでいくが、ジャンクのなかでもよりアバンギャルドな一群は、ロック的な様式と距離をおきながら奇妙な感覚を持った音楽を生み出していく。彼らは通常のロック・ミュージックの、ギター、ベース、ドラムスといった楽器編成を必ずしも用いず、4トラックや8トラックのテープレコーダーで自宅録音を行い、低予算で制作したレコードをリリースした。このようなアンダーグラウンド・ミュージックを多数リリースしたインディー・レーベルに、ニューヨークのシミー・ディスクがあった。レーベルを主宰していたクレイマーKramer(1958― )が率いるグループ、ボングウォーターやダニエル・ジョンストンDaniel Johnston(1961― )、あるいは大阪のグループ、ボアダムズなどのシミー・ディスクのミュージシャンたちには、後のローファイに連続するシニカルな姿勢がうかがえる。
 92年カリフォルニア州出身のペイブメントが『スランティッド&エンチャンティッド』をロンドンのレーベルからリリース。よれよれのビートと酩酊(めいてい)したようなギター・サウンドに、調子はずれのボーカルが加わったこの作品はカルト的な人気を集めた。彼らの登場を機にローファイなサウンドを持ったグループ、ガイデッド・バイ・ボイセズやセバドーといったグループに注目が集まり、これらがローファイ・ミュージックと呼ばれるようになった。
 94年になると、ベックBeck(1970― 、本名ベック・ハンセンBeck Hansen)が『メロー・ゴールド』でデビューし、アメリカン・ルーツ・ミュージックを簡素なヒップ・ホップ・ビートでつなぎ合わせたような雑食的な音楽性が評判を呼ぶ。ベックやペイブメントはメジャー・レーベルと契約し人気ミュージシャンとなったが、高価な機材や楽器に執着せず、安っぽいサウンドをあえて選択するなど、その活動は依然ローファイな精神に貫かれている。[増田 聡]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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