ジャンク(読み)じゃんく(英語表記)junk

翻訳|junk

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジャンク」の意味・わかりやすい解説

ジャンク
じゃんく
junk

中国水域で数千年にわたって広く使われてきた帆船の総称。中国語の船chuanからインドネシア語ジョングdjongになり、さらに英語のjunkになったといわれる。中国では戎克と書く。地方によって種類が多いが、構造上の共通の特徴は、船内が、竹の節からの着想と伝えられる多数の水密横隔壁で区画されていることである。このため船体の横強力が大きく、一部が破損浸水しても沈没することがない。河川用(内河戎克、内河民船)と航洋船(海舟)に大別される。河川用は平底で喫水が浅く、揚子江(ようすこう)上流の麻秧子(まおうし)、麺粉(めんふん)船、蛇(じゃ)船など、帆走より漕(こ)ぐほうに重点が置かれている。大きさは1~2トンから、大きくても100トン程度である。しかし、揚子江や黄河の下流で使用されるものは外洋にも出ることがあり、中間的な沿岸ジャンクに分類される。黄河ジャンク、太沽(タークー)漁船、温州(うんしゅう)漁船などがある。航洋船には北方型、南方型の別があり、北の安東(アントン)貿易船などは平底・浅喫水である。南の福建貿易船は最上の航洋型ジャンクとされ、竜骨舷側(げんそく)厚板などの縦強力材があるのが特徴である。航洋船の大きさは50~200トンぐらいのものが多いが、300トン前後のものもみられる。

 外観は角型船首、高船尾で、2本か3本のマストをもっている。帆は水平バッテン(横桟)が何本もある縦帆で、蛇腹式に畳む。舵(かじ)はきわめて大きく、外洋では深く水中に入れ、ヨットのセンターボードの役も果たす。

[茂在寅男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジャンク」の意味・わかりやすい解説

ジャンク
junk

中国型帆船。中国の沿岸,河川,湖沼に広くみられる貨客用運送船。船内は多数の水密隔壁で縦横に仕切られており,船首から船尾に貫く縦通材のないのが特色。航路によって,外洋ジャンクと内河ジャンクに大別される。外洋ジャンクは大型で,船体もしっかりして耐波性に富み,おもに帆走する。北は天津から,南は広東,ホンコンまで沿岸一帯を航行する。漁船などには比較的小型のものもあるが,400総tの大型のものも多い。内河ジャンクは,内陸部の河川,湖沼,クリークなどの水路に用いられている。外洋ジャンクに比べて小型で,100総tどまり。喫水が浅く,平底。簡単な帆で走るか,手で漕ぐものが多く,純帆船は少い。今日では近代的な船はすべて西洋型船で,歴史の流れからは取残された形になっている。

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