背広の下に着るシャツの総称。ワイシャツという名称は日本独自のもので,英語のホワイト・シャツwhite shirtが転訛(てんか)した言葉。明治初期には〈白じゅばん〉と訳されていたが,中期から末期にかけて〈ホワイト・シャツ〉という名称が多く用いられるようになり,大正初期にはワイシャツという呼名が定着した。また肌着としてのシャツと区別するのにワイシャツという用語は便利だった。昭和初期までのワイシャツは衿が取りはずし式になったセパレート・カラーだったが,それまで兵隊シャツとかカッター・シャツと呼ばれていた,衿が身ごろに縫いつけになったものも,背広に合わせるワイシャツとしてつくられるようになった。この形態のものが1935年ころからは一般化し,それ以後は特殊な礼装用以外はこれが主流になった。75年ころからはワイシャツに代わってビジネス・シャツやドレス・シャツの名称も多く用いられるようになっている。ワイシャツの特徴は衿と袖口の変化にあり,その種類は非常に多い。また,白無地を基調としながらも,色彩や模様や布地も多様多彩で,こうした色物ワイシャツをカラード・シャツ,柄物ワイシャツをパターンド・シャツと呼ぶこともある。明治時代の赤シャツやハイカラ,昭和50年代のボタンダウン,昭和60年代のカラード・シャツのように,一時代の風俗の典型となった例も多い。
執筆者:高山 能一
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