ネクタイ(読み)ねくたい(英語表記)necktie

翻訳|necktie

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ネクタイ」の意味・わかりやすい解説

ネクタイ
ねくたい
necktie

洋服の襟や首の回りに巻いて前で結ぶ、帯状や紐(ひも)状の飾り。西欧では、もとは男子用であったが、近代以降は女子服にも用いられている。装飾の少ない現代男子服では、とくに重要なアクセサリーとなっている。

 ネクタイはネックneckとタイtieの複合語で、単にタイともいう。ネクタイとよばれるようになったのは1830年代以後で、それまではクラバットcravatとよんでいた。古くは古代ローマ帝国軍人が用いたウールの首巻きフォーカルfocalがあったが、直接の起源は17世紀のクラバットとされている。その語源はクロアットcroate(クロアチア軽騎兵)で、ルイ14世(在位1643~1715)に仕えるためにクロアットがパリにきたとき、首に巻いていた色鮮やかな布を模したことによるとされている。これに類似したものは1640年代にすでにあったが、1656年ごろに本格的クラバットがフランス上流社会に登場し、60年代にはイギリスにも伝えられ、西欧男子服に一般化した。この時代の男子服は、丈長で襟なしや襟の小さなものであったため、襟元の飾りを必要とし、クラバットはよく調和した。当時は、ローン、モスリンシルクなどの柔らかい薄地の布をスカーフ状にしたものに、レースや刺しゅうで縁飾りをし、畳んで首の回りに巻いて、端を蝶(ちょう)結びや飾り結びにした。その後も、装飾や形、素材、結び方、大きさなどを変化させながら19世紀末まで続いた。そして、しだいに帯状のものへと変化し、ダービー・タイderbytieやフォア・イン・ハンドfour-in-handが登場し、今日的ネクタイの出現に至った。この類の装飾は世界各地、さまざまな時代に老若男女を問わず用いられている。

 今日のネクタイには次のような種類がある。形状からみると、〔1〕スカーフ状 アスコット・タイascot tie。イギリス、アスコット競馬場に集まる紳士の服装にこれが用いられたことに由来。幅広の絹製でピンなどで留める。本来はフロックコートなどにつけられたが、今日ではレジャー着や、女性にも用いられる。パフ・タイpuff tieともいう。スカーフ状ネクタイから帯状ネクタイへの過渡期に登場し、両者の形状をあわせもっている。〔2〕紐状 コード・タイcord tie、ウェスタン・タイwestern tie。〔3〕飾り結び ボー・タイbow tie、蝶ネクタイ。〔4〕帯状 フォア・イン・ハンドfour in hand、幅タイともいう。現在、ビジネス用などに用いるもっとも一般的なネクタイは、これに属する。今日、純粋のスカーフ状は、カジュアルな場合やスポーツ用、婦人、子供用などにみられる。

 ネクタイは製造方法によって織タイ、染タイ、編タイなどに分けられ、素材によって正絹タイ、合繊タイ、ウールタイ、革タイなどとよばれる。

 今日、帯状のネクタイの結び方や幅は、シャツ上着の流行によって多々変化するが、結び方はほぼ次の3種である。〔1〕ウィンザー・ノットwindsor knot 結び目が大きい。ショート・ポイント・カラーにあう。〔2〕エスクワイア・ノットesquire knot 一般的でなんにでもあう。〔3〕プレーン・ノットplain knot もっとも簡単な結び方。結び目が小さいので、ロング・ポイント・カラーにあう。今日のネクタイは、男子服の数少ない彩りのポイントである。好みや流行によって色、柄(がら)などに多彩を極め、多品種少量生産の典型品となっている。

[田中俊子]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ネクタイ」の意味・わかりやすい解説

ネクタイ
necktie

単にタイともいう。首や襟のまわりに巻いて,前で結ぶ帯状や紐状の布製の装飾用付属品の総称。ルイ 14世に仕えるためパリに来たクロアチアの軽騎兵隊の将兵が首に巻いた色鮮かなスカーフに始り,ここからフランス語クラバット cravate (ネクタイの意) の名が起った。一般に普及したのは 17世紀中期以後で,各種の変化を生んで 19世紀なかばにほぼ現在の形式となった。

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