日本大百科全書(ニッポニカ) 「ワイデン」の意味・わかりやすい解説
ワイデン
わいでん
Rogier van der Weyden
(1397/1400―1464)
フランドルの画家。トゥールネーに生まれる。1427~32年の修業時代をカンピンRobert Campin(1378/79―1444)のもとで送ったと推定される。カンピンは「フレマールの画家」Master of Flémalleと同一人ではないかと目される画家で、この画家の作品とワイデンの初期の作品とは混同されていたことがある。若くしてすでに師と比肩する力量を発揮していたのである。遅くとも36年以来ブリュッセル市の画家に任ぜられ、市庁舎の黄金の間に『正義図』(現存せず)を描いた。50年イタリアに旅行し、国際的な名声を得た。彼はファン・アイクに次ぐフランドル絵画の重要な存在であるが、宗教的な主題を通じて精神的・象徴的な内容を集中して追求した点、また対象の材質感よりは明晰(めいせき)な輪郭と彫刻的効果を、雰囲気の描写よりは厳正なコンポジションを重視した点で、ファン・アイクとは異なった内面的な表現世界に到達している。北方ゴシック絵画は彼によって新たな脈拍を得たといえる。64年6月18日ブリュッセルで没。代表作は『受胎告知』(パリ、ルーブル美術館)、『十字架降下』(マドリード、プラド美術館)など。
[野村太郎]