能楽笛方の流儀の一つ。現宗家は14世一噌庸二。能楽協会には10名ほどの役者が登録され,東京と福岡を中心に活躍している。重要無形文化財各個指定(人間国宝)の藤田大五郎を頂点に芸風が統一され,息の音を混ぜず,装飾音も少なめに,いわゆる〈竹を割ったように〉力強く吹く。中ノ舞,序ノ舞,真ノ序ノ舞といった舞で地にシオリを入れて吹くほか,《猩々乱(しようじようみだれ)》の地に長短2種類ないこと,神楽や楽という舞も森田流・藤田流と地の順序が入れ違っていることなど,音楽上この2流と対立していることが多い。流祖中村七郎左衛門は名人檜垣本(ひがいもと)彦兵衛(1527没)の弟子で,3世八郎右衛門から一噌姓を名のった。江戸時代は主として宝生流の座付であったが,その関係で,今日でも宝生流の《安宅》〈延年之舞〉の小書付き(特殊演出)のときは,一噌流独自の特殊な譜を吹く。仙台藩御抱えの役者だった平岩流は,明治以後絶えたが一噌流に大変近い譜を吹いていた。
執筆者:高桑 いづみ
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…細部の違いはあるが,〈序ノ舞〉〈真ノ序ノ舞〉〈中ノ舞〉〈天女ノ舞〉〈早舞(はやまい)〉〈男舞〉〈神舞〉〈急ノ舞〉〈破ノ舞〉など多くの舞事(まいごと)に用いられる。表に,一噌(いつそう)流の〈中ノ舞〉の〈呂中干ノ地〉を唱歌(しようが)で示す。【松本 雍】。…
※「一噌流」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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