囃子方(読み)ハヤシカタ

デジタル大辞泉 「囃子方」の意味・読み・例文・類語

はやし‐かた【×囃子方】

能・狂言・歌舞伎民俗芸能などで、囃子を奏する役。能・狂言では笛方小鼓方大鼓方太鼓方の四役、歌舞伎では三味線以外の各種楽器の奏者

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精選版 日本国語大辞典 「囃子方」の意味・読み・例文・類語

はやし‐かた【囃子方】

  1. 〘 名詞 〙 能楽・歌舞伎などで、囃子の演奏にあたる役。能・狂言では笛方・小鼓方・大鼓方・太鼓方の四役。歌舞伎では三味線以外の各種楽器の演奏者(鳴物師)の総称はやししゅう。はやしもの。はやして。はやしまち。

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改訂新版 世界大百科事典 「囃子方」の意味・わかりやすい解説

囃子方 (はやしかた)

日本音楽の用語。能と歌舞伎で用いられる。

 能の囃子方は四拍子(しびようし)とも称し,笛方,小鼓方,大鼓方,太鼓方で構成され,各楽器とも分業制度が守られ,他楽器を兼ねることはない。それぞれの楽器には流派がある。現在,笛方には一噌(いつそう)流森田流藤田流の3流が,小鼓方には幸(こう)流幸清(こうせい)流大倉流観世流の4流が,大鼓方には葛野(かどの)流高安(たかやす)流石井流大倉流・宝生錬三郎派宝生流)の4流1派が,太鼓方には観世流・金春(こんぱる)流の2流がある。

 なお,狂言にも囃子演奏を必要とする演目があり,その場合は能の囃子方が出演する。
執筆者: 歌舞伎では,広義には,唄方,三味線方および打楽器(大鼓,小鼓,太鼓その他),管楽器(能管,篠笛(しのぶえ)など)の演奏者(鳴物師)すべてを囃子方と呼ぶ。戦前までは唄方,三味線方,鳴物師は楽屋の一つの控室で,1人の囃子頭によって統率されていたため,囃子方は広義の意味をもっていた。しかし現在では長唄,三味線は長唄連中,その他の鳴物師は囃子連中と呼ばれ,控室も責任者も分かれている。したがって,囃子方は狭義に鳴物師を指していうことが多い。歌舞伎音楽の囃子方は能楽囃子方の専門化とは異なり,大小鼓,太鼓をはじめ各種の楽器を兼業する技能が要求されるが,笛方だけは管楽器として専門化されている。現在,歌舞伎音楽の狭義の囃子方には,梅屋,堅田,住田,仙波,田中,藤舎,中村福原鳳声望月六合の諸家がある。
囃子
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「囃子方」の意味・わかりやすい解説

囃子方
はやしかた

日本音楽用語。能楽や歌舞伎(かぶき)などで囃子の演奏にあたる者をいう。

 能楽の囃子方は、四拍子(しびょうし)それぞれの演奏者である笛方(ふえかた)、小鼓方(こつづみかた)、大鼓方(おおつづみかた)、太鼓方(たいこかた)よりなり、一人一芸の分業制度が守られ、他楽器を兼ねることはない。笛方が演奏するのは能管(のうかん)である。現在、流儀は、笛方に一噌(いっそう)流・森田流・藤田流の3流、小鼓方に幸(こう)流・幸清(こうせい)流・大倉流・観世(かんぜ)流の4流、大鼓方に葛野(かどの)流・高安(たかやす)流・石井流・大倉流・観世流の5流、太鼓方に観世流・金春(こんぱる)流の2流がある。流儀はおのおのの主張と手法をもっているが、能5流・狂言2流のいずれの囃子も勤める。

 歌舞伎では、古くは囃子方という語は長唄(ながうた)の唄方、三味線方および打楽器や管楽器の演奏者である鳴物師の総称で、この三者の統括責任者を「囃子頭(はやしがしら)」とよんだ。しかし、近年は、長唄(唄・三味線)と鳴物は組織上分離の傾向が強まり、責任者である部長も長唄と鳴物のそれぞれから出るようになり、したがって囃子方という語は鳴物師だけをさす場合が多くなっている。歌舞伎の囃子方(鳴物師)は、能楽の場合のように一つの楽器に専従するのではなく、笛以外のいっさいの楽器、つまり小鼓、大鼓、太鼓のほか陰(かげ)囃子(下座(げざ)音楽)に用いる大太鼓そのほか数多くの打楽器を演奏できなければならない。しかし、出(で)囃子においては小鼓が主導性をもち、流儀の家元や演奏グループの統率者はおおむね小鼓を打っている。なお、笛方は能管、竹笛(篠笛(しのぶえ)ともいう)を扱い専業化しているが、特殊な流派を除いては独自の流儀を形成しておらず、打楽器の家元に属しているのが常である。概して、能楽の囃子方のような楽器別による流儀組織の堅固さはなく、転流も比較的容易である。流儀は10流以上あり、現在歌舞伎界で活躍しているのは田中流、望月(もちづき)流などで、また柏(かしわ)流は長唄の唄・三味線を含む流儀として、住田(すみた)流又兵衛(またべえ)派、鳳声(ほうせい)流は笛方の流派として特色がある。

[小林 責]

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百科事典マイペディア 「囃子方」の意味・わかりやすい解説

囃子方【はやしかた】

能楽の器楽を担当する専門職。笛方(一噌(いっそう)・森田・藤田流),小鼓方(幸(こう)・幸清(こうせい)・大倉・観世流),大鼓方(葛野(かどの)・高安・石井・大倉・観世流),太鼓方(観世・金春流)に分かれる。太鼓方の参加しない能の曲もある。明治以前はシテ方の座の専属であったが,現在は自由契約制。なお現在の歌舞伎の音楽では,長唄と三味線以外の楽器奏者を囃子方という。
→関連項目

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世界大百科事典(旧版)内の囃子方の言及

【農業】より

… これに対して農具の改良は民間の努力にまつものが多い。九州の無床犂(抱持立犂)による林遠里の犂耕普及の努力,往復耕のできる松山犂,肥後の㋙犂,大正期に改良を続けた高北犂などによって,往復耕のできる短床犂が大正・昭和期の日本の犂の代表となる。このほか,脱穀機では明治期には鋼板を打ち抜いた千歯扱きの改良が中心となり,その後期から多様な足踏脱穀機製造の試みがなされた後,回転胴に曲がった針金を打ち込んだ足踏脱穀機に定着する。…

【老農】より

…また農会をつうじて老農の優れた経験的な技術の深化と普及が進むなど,明治農法の基礎が固まった。 著名な老農には,イネの品種改良や耕種改善に功のあった中村直三奈良専二,勧農社を組織して馬耕教師と抱持立犂(かかえもちたちすき)を全国にひろめた林遠里,駒場農学校から農商務省の巡回教師となった船津伝次平,勤倹力行を鼓吹した石川理紀之助などがおり,とくに中村,船津,奈良(あるいは林)を明治三老農という。しかし老農も,90年代に農科大学や農事試験場などが整備され,近代的な輸入農学が消化されると,しだいに活躍の場も狭くなっていった。…

※「囃子方」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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