中村流(読み)なかむらりゅう

精選版 日本国語大辞典 「中村流」の意味・読み・例文・類語

なかむら‐りゅう‥リウ【中村流】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 能楽囃子方の笛の一流派。近世初頭の中村七郎左衛門一噌を祖とする。一噌流
  3. 日本舞踊の一流派。近世中期の三世中村歌右衛門を祖とする芝翫派江戸歌舞伎笛方振付師をかねた中村彌八を祖とする虎治派、初代中村富十郎を祖とする中村流本伝、中村座の振付師の始祖名中村冠子を継承する中村直流など諸派がある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「中村流」の意味・わかりやすい解説

中村流
なかむらりゅう

日本舞踊の流派。 (1) 芝翫派 流祖は3世中村歌右衛門。文化~文政年間 (1804~30) の歌舞伎の名優で,所作事 (舞踊) を得意とし,3世坂東三津五郎と人気を競った。4世中村歌右衛門も『六歌仙』『三社祭』『靫猿』などを残した。その養子4世中村芝翫は明治前期に活躍し,歌舞伎舞踊の範を残した。その養子5世中村歌右衛門,その長男5世中村福助,その弟6世中村歌右衛門を経て,7世中村芝翫が 1953年に家元を継ぐ。 (2) 虎治派 宝暦~安永年間 (1751~81) の江戸歌舞伎の振付師で,『釣狐』『朝比奈』などをつくった中村弥八が流祖。娘の中村虎治が2世を継ぎ,以後男の家元は弥八,女は虎治を名のる。 (3) 中村流本伝 宝暦年間 (1751~64) の歌舞伎の女方,1世中村富十郎が流祖。当時の所作事の第一人者で,『石橋』『娘道成寺 (京鹿子娘道成寺) 』などを残した。中村のしほを称した2世,3世のあと直系が絶えた。 (4) 中村直流 西川鯉恵が 1948年に江戸の中村座の振付師の始祖中村冠子の名を継承して,8世中村冠子と名のって一派を立てた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「中村流」の意味・わかりやすい解説

中村流
なかむらりゅう

日本舞踊の一流派。中村流を称するものには五つの系統があるというが、主要な二つをあげる。

(1)中村歌右衛門(うたえもん)系 流祖は3世中村歌右衛門(1778―1838)。2世家元は流祖の門弟4世歌右衛門。3世は2世の養子4世中村芝翫(しかん)。4世は3世の養子5世歌右衛門。5世は4世の長男5世中村福助。6世は5世の弟6世歌右衛門。7世は5世長男の7世福助(現7世芝翫)。

(2)中村弥八・虎治(とらじ)系 流祖は明和(めいわ)・安永(あんえい)期(1764~81)にかけて活躍した中村弥八(1703―77)という。男性は弥八、女性は虎治を継ぐ決まりで、2世家元は流祖の娘が中村虎治となる(2世中村仲蔵(なかぞう)の妻)。3世家元は2世の養子で弥八を継いだが早世。4世家元は2世家元の門弟が養女となり、2世虎治を襲名。5世家元は初世虎治の門弟の娘で、3世虎治を襲名。6世家元は3世虎治の門弟で、4世虎治を襲名。7世家元は4世虎治の姪(めい)で、5世虎治を襲名(1887―1968)。8世家元は5世虎治の娘小虎が6世虎治を襲名(1907―1988)。6世虎治没後、その弟中村小十郎が流派の代表者となったが、彼もまもなく没した。その後は青森在住の門弟が7世虎治を継ぎ、活動している。なお、4世虎治は市川粂八(くめはち)一座の女役者中村歌吉(歌昇)である。近年は目だつ活動がない。

[如月青子]

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デジタル大辞泉プラス 「中村流」の解説

中村流

日本舞踊の流派のひとつ。江戸時代、化政期の歌舞伎役者、3代中村歌右衛門を流祖とする。「芝翫(しかん)派」ともいう。

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世界大百科事典(旧版)内の中村流の言及

【日本舞踊】より

… 振付師から出た流派では,志賀山万作を流祖とする志賀山流,江戸の振付師藤間勘兵衛から出た藤間流,西川仙蔵を祖とする西川流,幕末期から明治にかけて活躍した初世花柳寿輔が開いた花柳流,若柳吉松の若柳流や,市山七十郎の市山流等がある。また俳優の家から出たものに3世中村歌右衛門を初世とする中村流があり,同じ中村流を名のるものに,初世中村富十郎を祖とするもの,中村弥八(1703‐77)を祖とする虎治派,3世坂東三津五郎より出た坂東流があり,そのほか水木流,岩井流,市川流,尾上流等がある。さらに新舞踊からも新流派はあり,藤蔭流,五条流,林きむ子(1886‐1967)の林流,西崎緑の西崎流がある。…

※「中村流」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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