一方流(読み)イチカタリュウ

デジタル大辞泉 「一方流」の意味・読み・例文・類語

いちかた‐りゅう〔‐リウ〕【一方流/都方流】

平曲流派の一。鎌倉末期の如一にょいちを祖として、その弟子明石覚一確立。この系統の者は、その名に一・都・市などの字を用いる。→八坂流

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精選版 日本国語大辞典 「一方流」の意味・読み・例文・類語

いちかた‐りゅう‥リウ【一方流】

  1. 〘 名詞 〙いちかた(一方)

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改訂新版 世界大百科事典 「一方流」の意味・わかりやすい解説

一方流 (いちかたりゅう)

平曲の流派名。13世紀半ば過ぎ,平曲の伝承が筑紫出身の如一の率いる一方流と,城玄率いる八坂流の2流にわかれるが,如一の系統は名前に〈一〉をつけるところから〈一方流〉とよばれた。如一とその弟子明石覚一(?-1371)は,建礼門院関係の章段5曲を集めて〈灌頂巻〉と名づけ,それを神聖視することによって平曲を権威づけるほか,詞章にも聞かせどころを多くするための改変増補を加え,長く後世に伝えるための決定本の編纂を目ざした。その結果完成されたのが《覚一本》で,今日語り継がれている平曲の大もとがここで作られた。15世紀には平曲の隆盛にともない,一方流は師道,妙観,源照,戸嶋(島)の4派にわかれた。さらに江戸時代には師道派から出た波多野孝一(?-1651)と前田九一(?-1685)がそれぞれ流派をたて,そのうち前田流は今日なお伝承が続いている。
平曲
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「一方流」の意味・わかりやすい解説

一方流
いちかたりゅう

「都方流」とも書く。平曲の流派名。城一のあと,八坂城玄と坂東如一の2人が,それぞれ八坂流,一方流に分れ,異なる伝承をするにいたったと伝えられる。八坂流は城方ともいい,伝承者の名前に城の字が入り,一方流は,同様に一または都 (いち) の字が入る。のち,当道組織が6派に分れたが,師堂,妙観,源照,戸島の4派は一方流,妙聞,大山の2派は八坂流。一方流は譜本において「灌頂巻」を特立させることに特色があるが,如一の弟子覚一にいたって大成され,その後一方流には名人が輩出した。

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世界大百科事典(旧版)内の一方流の言及

【平曲】より

…そこに行長と生仏という人材があらわれて,《平家物語》という一大唱導芸術がつくり出されたということは考えられる。 13世紀も後半になると,京都八坂の城玄(じようげん),筑紫出身の如一(じよいち)という名人が出,それぞれ八坂流(やさかりゆう),一方流(いちかたりゆう)を立てた。以後,八坂流はあまりふるわず,平曲は一方流を中心に伝承されていく。…

【平家物語】より

…後者の非当道系諸本は,さらに,記事の多い広本系と少ない略本系とに分かれる。当道座では,南北朝期に琵琶法師の巨匠覚一(かくいち)が登場するに及んで一方(いちかた)流と八坂(やさか)流(城方(じようかた)流とも)の分派が生じ,それぞれ異なる本文を持つに至った。一方流の本文は,巻十二の後に,高倉天皇の中宮建礼門院(平清盛の娘)の生涯を六道の体験に擬して語る,物語の総集編ともいうべき〈六道の沙汰〉を中心にすえ,この女院が安徳天皇をはじめ,滅んだ平家一門の亡魂を弔うという〈灌頂(かんぢよう)巻〉を別巻として立てる。…

※「一方流」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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