日本大百科全書(ニッポニカ) 「万斯同」の意味・わかりやすい解説
万斯同
ばんしどう
(1638―1702)
中国、清(しん)代初期の学者。字(あざな)は季野、号して石園。浙江(せっこう)省鄞(きん)県(寧波(ニンポー))の人。黄宗羲(こうそうぎ)の門に学び、礼学と史学に長じた。明(みん)代の掌故に詳しく、かねて『旧唐書(くとうじょ)』以後の歴代史が纂修(さんしゅう)官の共編になったことに飽き足りなかったところから、1679年(康煕18)に明史館(みんしかん)がおこされたときも、その編纂事業に直接には参加せず、かえって500巻に及ぶ稿本を手定してみせた。ちなみに『明史』332巻は斯同の稿本を踏襲したものである。また徐乾元(じょけんげん)の『読礼通考』160巻も、実は斯同の筆に出るといわれる。ほかに『歴代史表』60巻、『儒林宗派』『羣書疑弁(ぐんしょぎべん)』各16巻、『石園詩文集』20巻などがあり、清朝への抵抗の精神を感じさせる。
[宮内 保 2016年3月18日]
『『清史稿 484巻』』▽『『国朝先正事略 32巻』』▽『『国朝詩人徴略 三巻』』▽『『清人文集別録 三巻』』▽『李著『万季野小伝』(『恕谷後集 六巻』所収)』▽『方苞著『万季野墓表』(『望溪先生文集 12巻』所収)』▽『銭大昕著『万先生伝』(『潜研堂文集 38巻』所収)』