日本大百科全書(ニッポニカ) 「下村千秋」の意味・わかりやすい解説
下村千秋
しもむらちあき
(1893―1955)
小説家。茨城県生まれ。早稲田(わせだ)大学英文科卒業後、同窓の牧野信一らと同人誌『十三人』を創刊。ここに載せた小説『ねぐら』が志賀直哉(なおや)に認められ、以後志賀に傾倒した。第一創作集『刑罰』(1924)を刊行し、昭和期にはプロレタリア文学の影響を受けて同伴者作家として活躍。作品集『天国の記録』(1931)などで、当時の社会問題として顕在化しつつあったルンペン・プロレタリアートを扱い、ルンペン文学流行の先駆となる。戦後は教育問題にも関心を向け、『中学生』(1952)を残した。
[柳沢孝子]
『『現代日本文学全集86 昭和小説集1』(1957・筑摩書房)』