六訂版 家庭医学大全科 「下腿骨骨幹部骨折」の解説
下腿骨骨幹部骨折
かたいこつこっかんぶこっせつ
Lower leg shaft fracture
(運動器系の病気(外傷を含む))
どんな外傷か
下腿には大きな
受傷の原因としては、直接に下腿に外力が加わることが多く、交通事故では大きな力が作用して起こります。皮膚の直下に脛骨があるため開放骨折が多くみられ、多発外傷となることも少なくありません。また、スポーツ中や転倒などで足部が固定された状態で下腿をねじると、間接的にねじれの力がはたらき、らせん状の骨折や斜めの骨折を生じることもあります。
症状の現れ方
直後から痛みがあり、歩けません。骨折のずれが大きいと下腿が曲って変形します。開放骨折では骨折端が皮膚を突き破り、皮膚に小さな傷がみられます。
また、この部位はコンパートメント症候群の発生が多いところです。これは、骨折により下腿筋肉群の閉ざされた区間(コンパートメント)が出血やはれで内圧が高まり、増強する疼痛と強い
検査と診断
前後、側面の2方向のX線撮影を行いますが、撮影時には骨折部位に粗暴な操作が加わらないようにしなければなりません。
また、間接的な介達外力による骨折では、腓骨の骨折部位が脛骨骨折の部位と異なり膝関節に近いことがあるので、下腿全長のX線をとり腓骨の骨折を見逃さないようにしなければなりません。
開放骨折では、皮膚や筋肉などの軟部組織の損傷程度を調べ、傷の部位からの細菌の検査をしておきます。
治療の方法
この骨折は若い人に好発することから、機能回復と早期の社会復帰を目指して治療法を選択しなければなりません。かつては保存的治療が行われてきましたが、新しい固定器具の開発によって手術的治療が主流となっています。ただし、骨の成長線が残っている小児では、多少のずれは許容範囲とされることもあり、多くは保存的に治療します。
ずれのない骨折、ずれがあっても整復したあとには安定している骨折などは保存的に治療します。しかし、長期の固定が問題点であり、足関節の動きの硬さが後遺症となることがあります。このことから手術的に治療することが多く、手術により膝や足関節の動きの制限を来すことなく、安定した成績がえられるようになっています。
手術法としては、骨折部分を太い釘で固定する
合併症はどんなものか
開放骨折では骨折部に細菌が入り、うまく治らないと
応急処置はどうするか
下腿部が大きく変形して痛みで歩行できないため、
王寺 享弘
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報