不空院(読み)ふくういん

日本歴史地名大系 「不空院」の解説

不空院
ふくういん

[現在地名]奈良市高畑町

春日山と号し、真言律宗本尊木造不空羂索観音坐像(国指定重要文化財、鎌倉時代)。通称福井之大師。菅家本「諸寺縁起集」などによれば、もと鑑真の住坊で、弘仁年中(八一〇―八二四)空海が藤原冬嗣のために興福寺南円なんえん堂を建立するにあたり、その雛形としての八角円堂と本尊を造立したと伝えている。「かけこみ寺」ともよばれ、格式の高い寺であったという。宝治二年(一二四八)将来の律三大部二〇具のうち、一具七三巻が西大寺叡尊から当院に与えられている(同年一〇月三〇日「将来律三大部配分状」海龍王寺文書)。「大乗院寺社雑事記」応仁二年(一四六八)閏一〇月一七日条によれば、興福寺大乗院の祈願所で、かつて鑑真・空海・叡尊が住しふく院ともいわれたとあり、近年無住寺となり荒廃したので尺迦堂・角堂・大門などを修理させたと記す。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

デジタル大辞泉プラス 「不空院」の解説

不空院

奈良県奈良市にある寺院。創建年は不詳だが、「大乗院寺社雑事記」などの文献には鑑真が滞在したとの記述がある。宗派は真言律宗、本尊は不空羂索(けんさく)観音。山号は春日山。縁切り、縁結び、女人救済の寺として知られる。別称「福井之大師」。

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