奈良市街地東方にあり、
平安時代には山岳仏教の霊地ともなり、多くの石仏群がある。春日山一円は古代からの石材供給地として知られ、近世にも郡山築城に際し、山中の石が多量に切出されている(多聞院日記)。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
奈良市東部にある山。奈良公園の東方にあって〈青垣〉をなす。前山をなすのが御蓋(みかさ)山(297m)で,この山を春日山と呼び(国土地理院地形図),その奥にある花山(498m。時には芳山(ほやま)を含めることもある)を春日奥山として区別したり,あるいはその全体を春日山と呼んだりもする。地質的には,御蓋山はその北方の若草山(三笠山)と同じ安山岩よりなる火山性の山で,花山は縞状片麻岩よりなる。御蓋山の基部は礫(れき)層よりなる台地状地形をなし,春日大社,東大寺,奈良公園,興福寺などが載っている。地形的には春日断層崖の北端をなす。春日山一帯は約1000種の植物の生育する原生林に覆われ,特別天然記念物に指定されている。またルーミスシジミの生息地として天然記念物に指定され,モリアオガエルも生息している。山内には古代からの春日山信仰を物語る小祠や石仏が多い。
執筆者:橋本 征治
御蓋山の西麓には藤原氏の氏神とされた春日大社が鎮座し,春日山はその神体山とされている。春日明神は藤原氏一族の権勢の確立によって氏寺である興福寺とともにその地位を高め,しばしば春日社神人,興福寺衆徒は春日大社の神木を奉じて入京し強訴を繰り返した。この神木は春日山に自生するサカキを根こぎにしたもので,神の依代であった。しかし,春日山の信仰は春日社と結び付く以前から神の鎮座する神奈備山とされていた。また水分(みくまり)の神の山として信仰され,香山から地獄谷石窟仏一帯にかけては死後魂のおもむく他界と観念されていた。このほか,春日山は遣唐使が航海安全を祈願した山であり,733年(天平5)金鷲(こんす)優婆塞良弁(ろうべん)が執金剛神悔過を修したことに代表されるように,奈良・平安時代には山岳仏教の霊地ともされた。
執筆者:宮本 袈裟雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
奈良市街地東部、御蓋山(三笠山)(みかさやま)の東にある山をさす。古くは花山(はなやま)(標高497メートル)を主峰に、南の香山(高山)(こうぜん)、西の御蓋山を含めて春日山といった。現在花山をさすこともあるが、一般に御蓋山の東に接する台地状の部分を春日山といい、東部の花山を芳山(ほやま)とともに春日奥山に含める。春日山、御蓋山は春日大社の神山として狩猟や樹木の伐採が禁じられてきたため、うっそうとした原始林(特別天然記念物)をいまにとどめ、ルーミスシジミ(国の天然記念物)やシカなどの生息地になっている。また国史跡の春日山石窟仏(せっくつぶつ)、地獄谷石窟仏のほか鶯(うぐいす)ノ滝、妙見堂、朝日観音、寝仏、首切地蔵などが点在し、春日奥山・若草山ドライブウェイが通じている。なお、春日山原始林は1998年(平成10)、世界遺産の文化遺産として登録された(古都奈良の文化財として東大寺など8社寺等が一括登録されている)。
[菊地一郎]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報
…標高293m。三笠山,御笠山とも書き,春日山の前山で,この山自体を春日山ともいう。笠を伏せたような山容をしていることからこの名がある。…
※「春日山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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