確率変数Snの確率分布が二項分布B(n,p)であるとすると、
は、ベルヌーイの大数(たいすう)の法則によって、nが大きいとき、例外的な場合を除いてほぼ0に近い。しかしSn-npをnで割るかわりにで割ったものについてはどうか。これについては次の定理がある。
と置けば、Ynの確率分布は、nが十分大きいとき正規分布N(0,1)に近い。すなわち、任意の実数a,b(a<b)に対して
が成り立つ。この定理をラプラスの定理またはド・モアブル‐ラプラスの定理という。これは、ベルヌーイの大数の法則を実用的な形にまで拡張したものである。
ラプラスの定理における二項分布の仮定を取り除いても同じような形の次の定理が成り立つ。確率変数X1、X2、……、Xnが独立であって、各Xiは平均値がm、分散がσ2であるような同一の確率分布をもつとする。このとき
と置けば、
の分布は、nが十分大きいときには正規分布N(0,1)に近い。この定理を中心極限定理という。この定理は種々の方向に拡張されるが、これら一連の定理も中心極限定理とよばれている。
[古屋 茂]
多数の偶然現象について,その極限的性質を述べたいろいろな確率論の定理があるが,これは理論的にも,また実際面への応用上からも最も重要な定理である。確率変数についていえば,X1,X2,……,Xnは独立で同じ分布に従うとし,それぞれの平均値をm,標準偏差をσとする。和の平均値はnm,標準偏差は\(\sqrt{n}\)σとなる。中心極限定理は,Snを規格化したもの,すなわち(Sn-nm)/\(\sqrt{n}\)σの分布は,nが大きければ標準正規分布に近いことを主張している。とくにSnが二項分布にしたがうときに詳しくいえば,nが大きいときSnがk1とk2(k1<k2とする)の間の値をとる確率は,標準正規分布においてにほぼ等しい(pは着目する事象の起こる確率,qはその余事象)。この近似は,npqが大きいほどよく(npqを少なくとも3以上にとれという説がある),また平均値の近くでよくあてはまっている。
執筆者:飛田 武幸
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…こうした基礎のうえに確率論は極限定理,確率過程論,数理統計学への応用等々数学の一分野として確立された。 同じ分布に従う独立な確率変数の和を規格化(平均値を0に,分散を1にするよう適当な数を引いたり割ったりすること)すれば,変数の個数が多いときその分布は標準正規分布に近いとする中心極限定理,また関連した極限定理はソ連のヒンチンA.Y.Khintchin(1894‐1959)をはじめ多くの学者によって研究された。また時間の推移とともに変化する偶然現象を扱う確率過程の研究は,近代確率論のもっとも重要な課題となっている。…
…実際,前述の解熱剤の例でいえば,その効果は下がった体温の量で表され,基本的にはある定まった値(平均値m)であるが,患者の体質や病状などに個人差があって,mからの偶然誤差が生ずる。この誤差の分布は,中心極限定理の教えるところによって正規分布と仮定するのが妥当であることがわかる。解熱剤の平均的効果を知るには,得られた標本からmの値を推定することになる。…
…この信頼係数を知るためには,一般には,母集団の各要素の値が未知の場合にも標本平均の分布がわからなければならない。これを保証するのが中心極限定理である。この定理によると,母集団の分布がどんな形をしていてもその平均μと分散σ2が既知なら,無作為に数多くの標本をとりさえすれば,標本平均は近似的に母平均μに一致する平均をもち,分散σ2/nをもつ正規分布に従う。…
※「中心極限定理」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
東海沖から九州沖の海底に延びる溝状の地形(トラフ)沿いで、巨大地震発生の可能性が相対的に高まった場合に気象庁が発表する。2019年に運用が始まった。想定震源域でマグニチュード(M)6・8以上の地震が...
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