ベルヌーイ(読み)べるぬーい(その他表記)Johann Bernoulli

デジタル大辞泉 「ベルヌーイ」の意味・読み・例文・類語

ベルヌーイ(Bernoulli)

(Jakob ~)[1654~1705]スイス数学者。弟ヨハンとともに微積分学の成立に貢献、微分方程式の求積法などを発展させた。死後出版された「推論術」には大数の法則やベルヌーイ数が含まれ、確率論の実質的な出発をなす。
(Johann ~)[1667~1748]スイスの数学者。の弟。兄から数学を学び、ともに最速降下線問題・懸垂線問題などを解き、微積分学の成立に貢献。講義録「無限小解析」は世界最初の微積分学の体系。
(Daniel ~)[1700~1782]スイスの物理学者・数学者。次男。父とともに流体力学を確立、ベルヌーイの定理を発表。弦の振動を数学的に研究し、関数概念の確立や熱伝導論に道を開いた。

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精選版 日本国語大辞典 「ベルヌーイ」の意味・読み・例文・類語

ベルヌーイ

  1. [ 一 ] ( Jacques Bernoulli ジャック━ ) スイスの数学者、物理学者。ライプニッツの微積分学の発展に貢献。カテナリー曲線、弾性曲線の問題を解決。確率論の系統的研究によって高名。著「推論術」。(一六五四‐一七〇五
  2. [ 二 ] ( Jean Bernoulli ジャン━ ) スイスの数学者。ジャック=ベルヌーイの弟。微積分学・微分方程式・最速降下線など業績は大。(一六六七‐一七四八
  3. [ 三 ] ( Daniel Bernoulli ダニエル━ ) スイスの数学者、物理学者。ジャン=ベルヌーイの息子。「ベルヌーイの定理」など流体力学の基礎的概念を理論・実験両面で確立。著「流体動力学」。(一七〇〇‐八二

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベルヌーイ」の意味・わかりやすい解説

ベルヌーイ(Johann Bernoulli)
べるぬーい
Johann Bernoulli
(1667―1748)

スイスの数学者。13歳年長の兄ヤコブとともに、微積分学の成立に貢献した。バーゼルの生まれ。初め古典学と医学を学び、18歳で文学修士、23歳で医学の免許を得た。数学は兄に学んだ。1690年からパリに遊学、ここで騎兵大尉ロピタルGuillaume F. A. de l'Hôpital(1661―1704)侯爵に微積分学の講義をしたが、ロピタルがその講義を『無限小解析』にまとめて1696年に出版、これが微積分学が体系として公刊された最初とされる。

 バーゼル大学教授の兄ヤコブが重厚であったのに対し、ヨハンは俊敏で名誉欲が強かったといわれ、1695年オランダフローニンゲン大学教授となって以後、微分方程式の求積法や変分法をめぐって兄弟は優劣を競い合い、それがために不仲になった。兄の死後、バーゼル大学教授となるが、ここではイギリスのニュートン派と争いを始めた。すなわち、今日でいうテーラー級数の原型を、ライプニッツやベルヌーイ兄弟ももっていたのであるが、それにニュートン派の若いテーラーが手をつけたためである。さらに晩年になってから、息子ダニエルとの間で流体力学についての先取権を争っている。当時は、数学といっても数理物理学をそのなかに含んでおり、力学の仮想変位の原理についてもヨハンの寄与が伝えられている。ヨハンは18世紀前半のヨーロッパ数学界に君臨した人物であり、18世紀最大の数学者とされるオイラーも彼の弟子であった。

[森 毅]


ベルヌーイ(Jakob Bernoulli)
べるぬーい
Jakob Bernoulli
(1654―1705)

スイスの数学者。バーゼルの生まれ。代々数学者を出したことで有名な、ベルヌーイ一家の最初の数学者である。最初は聖職を目ざしていたが、1684年のライプニッツの新しい数学に刺激を受け、1687年以降バーゼル大学数学教授として、微積分学の実質的成立へ向けて、弟のヨハンとともに貢献した。この兄弟はその数学をめぐって仲が悪く、競合しながら微積分学を発展させた。微分方程式の求積法はこの二人によるものが多いし、変分法の出発もこの二人である。最速降下線問題は弟ヨハンの提出を、彼やニュートンやライプニッツらで解いたものだし、等周問題の解決をめぐっても、彼が提出して二人で争っている。したがってこれらの業績については、二人の競合的業績というべきであろう。しかし、彼の死後に発行された『推論術』Ars conjectandi(1713)は、確率論の実質的出発として、彼の名を高からしめている。有限確率の計算としては、それ以前にカルダーノパスカルがあるが、それを大量現象の解析と結び付けたのは、彼に始まる。ベルヌーイ試行に伴う大数の法則であって、それは現代確率論に及ぶ根本原理の一つである。また、確率論に伴う級数計算にあたって、ベルヌーイ数やベルヌーイ多項式が生まれている。確率論と解析学との緊密な関係は、彼に始まっている。

[森 毅]


ベルヌーイ(Daniel Bernoulli)
べるぬーい
Daniel Bernoulli
(1700―1782)

スイスの数学者。ヨハン・ベルヌーイの次男として、オランダのフローニンゲンに生まれる。新設されたロシアのペテルブルグ科学アカデミーが父ヨハンに数学者の推薦を求めたため、兄のニコラスNicholas(1695―1726)に次いで1725年ペテルブルグ科学アカデミー教授となり、8年後に友人のオイラーを後任に推して、故郷のスイス、バーゼル大学教授となり、以後はフランスのパリ学士院を中心に活動した。ペテルブルグ時代の流体力学の建設については、そのパリ学士院賞受賞をめぐって父ヨハンから横やりが入り、その先取権を父子で争った。今日、流体力学の建設についてはベルヌーイ父子ということになっている。

 ダニエルの名をとどめる業績は、1753年の「弦の振動論」である。弦の単振動解はテーラーによって得られていたが、一般の解としてそれを合成した三角級数解はダニエルによる。そのころ、別の解がダランベールによって得られ、それをめぐって関数とは何かについての深刻な議論が、オイラーを巻き込んでおこった。それは19世紀になって関数概念が確立していくための陣痛であった。また三角級数は、これも19世紀になってフーリエが熱伝導論にそれを応用するフーリエ級数の始まりであった。もっと一般的にみれば、「重ね合わせの原理」によって、一般の振動を単純な固有振動に分析総合することであり、19世紀以降の数理物理として関数解析の主題となるスペクトル解析の始まりでもあった。

[森 毅]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベルヌーイ」の意味・わかりやすい解説

ベルヌーイ
Bernoulli

スイスのバーゼルの家系で,多くのすぐれた数学者と科学者を出した。彼らは W.ライプニッツの微分積分学を発展させ,これを力学,流体力学,光学,確率論などに適用し,17世紀後半および 18世紀の物理科学の発展に大きく貢献した。特にすぐれた業績を残したのはヤーコプ Jakob (1654.12.27.バーゼル~1705.8.16.バーゼル) ,弟のヨハン Johann (1667.7.27.バーゼル~1748.1.1.バーゼル) ,ヨハンの次男のダニエル Daniel (1700.1.29.フローニンゲン~82.3.17.バーゼル) である。ヤーコプもヨハンも父の意に反して数学者になった。ヤーコプは 1687年にバーゼル大学の数学教授,ヨハンは 95年から 1705年までオランダのフローニンゲンで数学を教え,兄の死後バーゼルで同教授職についた。ヤーコプは微積分学を用いて,落下曲線,懸垂線,変分法などの研究を行い,『推測の技術』 (1713) を著わして確率論に貢献した。この書のなかで,有名なベルヌーイ数をはじめ,順列組合せ,大数の法則などが論じられている。ヨハンも微積分学を用いて曲線の長さや面積,微分方程式,光学,航海法などについて考究した。しばしば兄と同じ問題を考察することがあり,このため兄弟の間に摩擦が生じ,公然と激論を戦わすことが多かった。またヨハンはニュートンとライプニッツとの間に生じた,微積分学の発見者に関する論争でライプニッツを熱心に弁護したことで有名である。ダニエルは医学,哲学,論理学をバーゼルその他で学び,ペテルブルグ科学アカデミーの教授職を経て,32年バーゼル大学教授。 38年彼の名を不朽にした『流体力学』を著わし,流体力学の基礎定理の一つであるベルヌーイの定理を発表した。 25年から 49年まで,天文学,重力,潮の干満,海流などの問題でフランスの科学アカデミーから 10度に及ぶ賞を受賞した。また,確率論にも多くの業績がある。

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百科事典マイペディア 「ベルヌーイ」の意味・わかりやすい解説

ベルヌーイ

スイスの理論物理学者。数学者Johann Bernoulliの子。初め医学,のち数学を学び,1725年ペテルブルグ大学教授,1733年バーゼル大学教授。微積分学,確率論,振動論,流体力学などを研究,著書《流体力学》(1738年)にベルヌーイの定理を発表。
→関連項目気体分子運動論トリチェリの定理流体力学

ベルヌーイ

スイスの数学者。1687年バーゼル大学教授。ライプニッツの微積分学を充実,発展させ,等時曲線,等周問題等を研究,大数の法則を立てて確率論を体系化した。→ベルヌーイ(Johann)

ベルヌーイ

スイスの数学者。Jakob Bernoulli(ベルヌーイ)の弟。1695年フロニンゲン,1705年バーゼル各大学教授。兄とともに微積分学の発展に貢献,関数functioの語,重力加速度の記号gを導入,微分方程式,最短時降下線等を研究。

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