デジタル大辞泉 「ベルヌーイ」の意味・読み・例文・類語
ベルヌーイ(Bernoulli)
(Johann ~)[1667~1748]スイスの数学者。の弟。兄から数学を学び、ともに最速降下線問題・懸垂線問題などを解き、微積分学の成立に貢献。講義録「無限小解析」は世界最初の微積分学の体系。
(Daniel ~)[1700~1782]スイスの物理学者・数学者。の次男。父とともに流体力学を確立、ベルヌーイの定理を発表。弦の振動を数学的に研究し、関数概念の確立や熱伝導論に道を開いた。
スイスの数学者。13歳年長の兄ヤコブとともに、微積分学の成立に貢献した。バーゼルの生まれ。初め古典学と医学を学び、18歳で文学修士、23歳で医学の免許を得た。数学は兄に学んだ。1690年からパリに遊学、ここで騎兵大尉ロピタルGuillaume F. A. de l'Hôpital(1661―1704)侯爵に微積分学の講義をしたが、ロピタルがその講義を『無限小解析』にまとめて1696年に出版、これが微積分学が体系として公刊された最初とされる。
バーゼル大学教授の兄ヤコブが重厚であったのに対し、ヨハンは俊敏で名誉欲が強かったといわれ、1695年オランダのフローニンゲン大学教授となって以後、微分方程式の求積法や変分法をめぐって兄弟は優劣を競い合い、それがために不仲になった。兄の死後、バーゼル大学教授となるが、ここではイギリスのニュートン派と争いを始めた。すなわち、今日でいうテーラー級数の原型を、ライプニッツやベルヌーイ兄弟ももっていたのであるが、それにニュートン派の若いテーラーが手をつけたためである。さらに晩年になってから、息子ダニエルとの間で流体力学についての先取権を争っている。当時は、数学といっても数理物理学をそのなかに含んでおり、力学の仮想変位の原理についてもヨハンの寄与が伝えられている。ヨハンは18世紀前半のヨーロッパ数学界に君臨した人物であり、18世紀最大の数学者とされるオイラーも彼の弟子であった。
[森 毅]
スイスの数学者。バーゼルの生まれ。代々数学者を出したことで有名な、ベルヌーイ一家の最初の数学者である。最初は聖職を目ざしていたが、1684年のライプニッツの新しい数学に刺激を受け、1687年以降バーゼル大学数学教授として、微積分学の実質的成立へ向けて、弟のヨハンとともに貢献した。この兄弟はその数学をめぐって仲が悪く、競合しながら微積分学を発展させた。微分方程式の求積法はこの二人によるものが多いし、変分法の出発もこの二人である。最速降下線問題は弟ヨハンの提出を、彼やニュートンやライプニッツらで解いたものだし、等周問題の解決をめぐっても、彼が提出して二人で争っている。したがってこれらの業績については、二人の競合的業績というべきであろう。しかし、彼の死後に発行された『推論術』Ars conjectandi(1713)は、確率論の実質的出発として、彼の名を高からしめている。有限確率の計算としては、それ以前にカルダーノやパスカルがあるが、それを大量現象の解析と結び付けたのは、彼に始まる。ベルヌーイ試行に伴う大数の法則であって、それは現代確率論に及ぶ根本原理の一つである。また、確率論に伴う級数計算にあたって、ベルヌーイ数やベルヌーイ多項式が生まれている。確率論と解析学との緊密な関係は、彼に始まっている。
[森 毅]
スイスの数学者。ヨハン・ベルヌーイの次男として、オランダのフローニンゲンに生まれる。新設されたロシアのペテルブルグ科学アカデミーが父ヨハンに数学者の推薦を求めたため、兄のニコラスNicholas(1695―1726)に次いで1725年ペテルブルグ科学アカデミー教授となり、8年後に友人のオイラーを後任に推して、故郷のスイス、バーゼル大学教授となり、以後はフランスのパリ学士院を中心に活動した。ペテルブルグ時代の流体力学の建設については、そのパリ学士院賞受賞をめぐって父ヨハンから横やりが入り、その先取権を父子で争った。今日、流体力学の建設についてはベルヌーイ父子ということになっている。
ダニエルの名をとどめる業績は、1753年の「弦の振動論」である。弦の単振動解はテーラーによって得られていたが、一般の解としてそれを合成した三角級数解はダニエルによる。そのころ、別の解がダランベールによって得られ、それをめぐって関数とは何かについての深刻な議論が、オイラーを巻き込んでおこった。それは19世紀になって関数概念が確立していくための陣痛であった。また三角級数は、これも19世紀になってフーリエが熱伝導論にそれを応用するフーリエ級数の始まりであった。もっと一般的にみれば、「重ね合わせの原理」によって、一般の振動を単純な固有振動に分析総合することであり、19世紀以降の数理物理として関数解析の主題となるスペクトル解析の始まりでもあった。
[森 毅]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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