化学辞典 第2版 「中性子源」の解説
中性子源
チュウセイシゲン
neutron source
中性子を発生する装置やそのなかで起こる核反応,あるいはその反応に関与する物質をいうこともある.核外に出た単独の中性子は,短い半減期(約15 min)でβ崩壊して陽子になるが,種々の核反応,(γ,n),(d,n),(p,n),(α,n),(n,f)によって発生させることができる.中性子源は3種類に分類できる.【Ⅰ】放射性核種による中性子源.226Ra,222Rn,210Po,24Na,124Sb,140La などの放射性核種と,(α,n)あるいは(γ,n)反応を起こす 2H,9Be,11B などを混合するか,252Cf のような自発核分裂する核種をそのまま利用する.もっともよく使われているのは226Ra-9Be中性子源である.簡単な装置で中性子が得られるが,エネルギースペクトルは連続で,大きな中性子束は得られない.また,210Po-9Be中性子源は226Ra-9Beと違ってγ線を放出しないので,きれいな中性子源といわれるが,半減期が短い.【Ⅱ】加速器による中性子源.重陽子(ジュウテロン)や陽子のような荷電粒子を加速して,Liや 9Be などをターゲットとして衝突させて核反応を起こさせ,中性子源とする.粒子ビームのエネルギーをかえることによって,エネルギーの異なる中性子をつくることができ,大きな中性子束も得られる.【Ⅲ】原子炉による中性子源.235U や 239Pu などの核分裂連鎖反応によって,高速中性子も得られる.一般の原子炉では大部分が熱中性子である.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報