日本大百科全書(ニッポニカ) 「中部圏」の意味・わかりやすい解説
中部圏
ちゅうぶけん
1966年(昭和41)に議員立法としてできた「中部圏開発整備法」に基づく圏域名で、首都圏、近畿圏に対応するわが国三大都市圏の一つである。東海地方の愛知・岐阜・静岡県、北陸地方の福井・石川・富山県、中央高地の長野県、近畿地方の三重・滋賀県を包括する広域圏で、面積5万9526平方キロメートル、人口約2116万(1995)、全国比は面積15.8%、人口16.9%である。
中部圏の中核は名古屋市であるが、東京都区部を中核とする首都圏、大阪市を中核とする近畿圏に比べると中核都市の都市力の弱さから、また東海、北陸、中央高地など異質地域の集合体であり南北交通軸の未整備などのため、大都市圏としての一体性に欠ける。しかし、(1)土地、水、緑などにはゆとりがあり今後の開発余力をもち、(2)地元意見を反映させるための諸機関、たとえば「中部圏開発整備地方協議会」、調査機関としての「中部開発センター」などを有し、(3)国民的共有財としての日本アルプス、富士山など自然観光地域や伊勢(いせ)神宮など国民的精神統合の拠点を有するなど、他圏とは異なる多様な特性をもっている。
中部圏は、首都圏、近畿圏の中間的位置を占め、1998年(平成10)3月末に閣議決定された国土計画、「新しい全国総合開発計画」が打ち出した、多軸型国土構造としての四つの国土軸(北東、日本海、太平洋新、西日本)のすべてがここで接する。しかも開発余力を蔵する地域で、すでに超過密化の東西両圏の経済、文化、人口などの受け皿として、国土全体の調和ある発展を期するためには必要不可欠の圏域、「保全区域」の見直しや都市・交通軸の整備充実が急がれる必要のある圏域である。
[伊藤郷平・伊藤達雄]