「近畿圏整備法」(1963)によって規定されている大阪、京都、兵庫、奈良、滋賀、和歌山、三重の近畿地方7府県と、中部地方の福井県を含む範囲。実質的には巨大都市大阪を中核とし、その都市的影響を強く受ける地域を全体として整備、開発するために設定された圏域をいう。後に制定された中部圏に三重、滋賀、福井県が含まれたので、この3県は両圏に重複している。
近畿圏整備の目的は首都圏整備の場合とほとんど同じで、既成都市地域への過度集中の防止と、地域間格差の解消を目ざして、既成市街地域とその近郊の整備、周辺・背後・外側部の開発を同時に広域的に実施することによって、圏内の秩序と均衡ある発展を図ることである。そのため、圏内には既成都市区域、近郊整備区域、都市開発区域、保全区域などが指定されている。既成都市区域は、大阪市、神戸市、京都市などの区域のうち、産業・人口の過度の集中防止と都市機能の維持・増進を図る必要がある市街地区域をいい、政令で定められる。近郊整備区域は、既成都市中心部から半径約50キロメートルの圏域内で相当程度の人口集中と第二次産業または第三次産業の集積があり、母都市と交通が密接で通勤・通学人口の多い地域であって、計画的に市街地として整備する必要がある区域をいう。また、都市開発区域は、約50キロメートル以上の圏域外で、既成都市区域に集中する人口・産業を分散定着させるため、都市として開発する必要のある区域をいう。保全区域は、文化財の保存と緑地の保全、または観光資源の保全・開発が必要な区域である。近郊整備区域、都市開発区域、保全区域は、国土交通大臣が指定する。
近畿圏整備法に基づく近畿圏基本整備計画は、1965年(昭和40)の第一次計画以来、1971年の第二次計画、1978年の第三次計画、1988年の第四次計画、2000年(平成12)の第五次計画(約15年間を予定)までしばしば改定されながら進められている。近畿圏は奈良、京都など考古学的・歴史的文化財がきわめて多く、保全と開発の調和が重要である。
[高野史男]
『近畿都市学会編『近畿圏整備と都市』(1968・大明堂)』▽『日本地誌研究所編『日本地誌Ⅰ 日本総論』(1980・二宮書店)』▽『阿部和俊著『日本の都市体系研究』(1991・地人書房)』
…なお,近畿という名称と区分が初めて用いられたのは,1903年刊行の国定教科書においてであり,それ以前にさかのぼらない。 ちなみに1963年に成立した近畿圏整備法を機に近畿圏という名称も公用化しているが,その範囲には近畿地方の2府5県のほかに福井県も加えられている。一方三重県は,中部圏整備法の範囲にも含まれるなど中部地方との関連が強く,時には中部地方の愛知,岐阜,静岡の3県とともに東海地方として一括され,近畿地方から除外される慣行もみられる。…
※「近畿圏」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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