日本大百科全書(ニッポニカ) 「九か国条約」の意味・わかりやすい解説
九か国条約
きゅうかこくじょうやく
1922年2月6日、ワシントン会議で調印された中国に関する一連の原則を定めた条約。調印国は、アメリカ、ベルギー、イギリス、中国、フランス、イタリア、日本、オランダおよびポルトガルの9か国。批准完了は25年8月5日。のちにスウェーデン、ノルウェー、デンマーク、メキシコ、ボリビアが参加して、十四か国条約となった。全文9か条からなる。第1条で、(1)中国の主権・独立および領土的・行政的保全を尊重する、(2)中国が有効な安定した政府を樹立し維持するため障害のない機会を与える、(3)中国全土を通じる商工業の機会均等主義を確立する、(4)中国における排他的特権の獲得を差し控える、という原則が定められた。そのほか、中国における門戸開放、機会均等をいっそう有効にするための条件(3条)、勢力範囲創設の否定(4条)、鉄道に関する差別待遇の廃止(5条)、中国の中立尊重(6条)などが合意された。この条約により、アメリカはかねてから主張してきた中国における門戸開放政策を成文化し、列強に承認させ、列強の勢力範囲を否定し、極東における国際関係の主導権を握った。また中国における日本の特殊権益を承認した石井‐ランシング協定は廃棄された。別途に開かれた日中交渉により、日本は二十一か条要求の一部放棄、膠州湾(こうしゅうわん)租借地の返還などを迫られ、かくして日本の対中国進出にストップをかけようとするアメリカのねらいは成功を収めた。
[宇佐美滋]