租借地(読み)ソシャクチ

デジタル大辞泉 「租借地」の意味・読み・例文・類語

そしゃく‐ち【租借地】

ある国が、他国から租借した土地。19世紀末から20世紀にかけて、中国に多くみられた。

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精選版 日本国語大辞典 「租借地」の意味・読み・例文・類語

そしゃく‐ち【租借地】

  1. 〘 名詞 〙 国家が特別の合意に基づき他国から租借した土地。一九世紀末から二〇世紀にかけて特に中国にみられた制度で、ドイツ(のち日本)の膠州湾ロシア(のち日本)の旅順港・大連港イギリスの九龍半島・威海衛フランス広州湾など。

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改訂新版 世界大百科事典 「租借地」の意味・わかりやすい解説

租借地 (そしゃくち)

国家が領域の一部を特別の合意によって他の国家に貸す場合,この領域の一部を租借地という。また,貸した国家を租貸国,借りた国家を租借国,特別の合意を租借条約という。租借条約によって,一定の期限が定められる。租借国が租借地の統治権を行使しない場合と行使する場合とがある。前者は非政治的租借地,後者は政治的租借地である。1898年の条約でフランスがニジェール川沿いの土地を貨物の陸揚げなどのためにイギリスから租借したのは,非政治的租借地の例である。

 政治的租借地の著名な例としては,中国のものがあげられる。中国では,租界も設定された。租界は,外国人の居住・貿易権の確保という経済的目的のために設定された。ところが,政治的租借地に関しては,日清戦争に敗れて弱体ぶりをさらした中国に対し領土割譲に類する実際的効果を得ようとした列強の相互牽制のため,また,中国国民の憤激を回避したい清朝の体面のため,〈租借〉という名目が使われたとされる。このような政治的租借地では,租借国が広範な統治権を行使した。それでも,租借条約によれば,一般に中国が租借地の主権をもち,租借地は中国の領域である。そして,租借権が消滅した場合,主権が完全にその効果を回復するとされたから,中国がもつ主権は,日本が復帰前の沖縄,小笠原にもっていた残存主権と似た面があるといえる。
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日清戦争後,まず列強が求めたのは海軍根拠地であった。すなわち,ロシア,ドイツ,フランスは三国干渉によって日本の進出を抑えたことの報酬と称して事実上の割譲を中国に強要した。ドイツは1897年(光緒23)11月にドイツ人宣教師殺害事件を口実に青島を武力占領し,翌98年3月の条約で膠州湾を99ヵ年の期限つきで租借した。これに刺激されて同じ年にロシアは旅順,大連(各25ヵ年),三国干渉に加わらなかったイギリスもロシアとの勢力均衡を理由に威海衛(期限はロシアが旅順,大連を租借している間)と九竜半島(99ヵ年),翌年フランスは広州湾(99ヵ年)をおのおの租借したのである。イタリアも三門湾の租借を要求したが成功しなかった。

 これらの地域は広い中国のなかで面積こそわずかであったが,いずれも広大な後背地をもち,経済上・軍事上の重要地域であった。加えて租借条約は租借権のほかに租借地ないし背後地域における鉄道敷設,鉱山開発などに対して租借国の優先権や独占権を必ず規定していた。このように租借地は中国侵略を進める列強にとって絶好の根拠地となったのである。また,日露戦争時の旅順,大連,第1次大戦時の膠州湾のように,租借地の存在によって中国が直接関係しない戦争に巻き込まれる危険があった。膠州湾は第1次大戦後に租借地として日本へ継承されたが,1922年に中国へ還付された。旅順,大連も日露戦争後に日本へ継承され,45年に日本の敗戦とともに消滅した。また,威海衛は1930年,広州湾は45年におのおの中国へ返還された。ただ九竜半島のみはイギリスの香港植民地の一部として存続していたが,84年,中国とイギリスは97年6月末までに香港全域を中国に返還することを明記した共同宣言に調印し,97年香港は中国に返還された。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「租借地」の意味・わかりやすい解説

租借地
そしゃくち
leased territory

ある国が条約に基づいて借り受けた他国領土の部分をいう。19世紀の末よりヨーロッパ列強と日本が、清(しん)国に要求して租借地を得た。まず1898年にドイツが膠州(こうしゅう)湾を、ロシアが旅順(りょじゅん)・大連(だいれん)を、イギリスが九竜(きゅうりゅう)半島と威海(いかい)を、フランスが広州湾を租借した。日露戦争後、日本はロシア租借地(関東州)の権利を取得した。また1919年のベルサイユ条約によってドイツ租借地の膠州湾を引き継いだ。租借国が租借地に対してもつ権利は、租借に関する個々の条約に基づくが、租借国が立法・行政・司法の全般にわたる統治権を行使しうる点で共通している。また、租借の期限も普通は99年と長期間であったため、租借は仮装の割譲であるといわれたが、割譲とは異なる。租貸国は潜在的な主権を維持し、租借国は租貸国の同意なくして租借地の地位を変更しえないからである。期限満了により、またそれ以前でも租借国の放棄によって、租貸国はすべての権利を回復する。その後、租借地は次々に返還され、1984年12月に中英共同宣言が調印され、1985年5月に発効し、1997年7月1日香港(ホンコン)が中国に返還されて英中の租借関係が終了した。また、ポルトガルの領土マカオも1999年12月に中国に返還された。

 ほかに特殊なものとして、アメリカが1903年キューバから租借したグアンタナモ湾岸がある。アメリカはこれを海軍基地として使用し、キューバ革命後のキューバ政府の返還要求には応じていない。2002年からはアフガニスタンやイラクで拘束された人の収容所として用いられ、グアンタナモ収容所とよばれている。

[太寿堂鼎・広部和也]

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百科事典マイペディア 「租借地」の意味・わかりやすい解説

租借地【そしゃくち】

一般に2国間の条約によって,一方の国(租貸国)により他方の国(租借国)に貸与される地域。近代中国に典型的にみられ,諸外国は一定地域を期限付で借り受け,そこで統治の全権を行使した。領土主権は中国に存したが,統治権の強さ,期間の長さ(25〜99年)および軍事的要地が多かったことから諸外国の侵略基地となり,この制度は事実上の領土割譲といわれた。膠州湾(ドイツ),関東州(ロシア,日本),威海(英国),広州湾(フランス)などがあったが,香港植民地の一部としての九竜(英国)が1997年に返還され,現存する租借地はなくなった。→租界香港返還
→関連項目植民地湛江長山列島青島

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「租借地」の意味・わかりやすい解説

租借地
そしゃくち
leased territory

国家間の合意によって一方の当事国 (租貸国) から他方の当事国 (租借国) に貸与された領土。租借は一定の期限を定めてなされる。たとえば,中国から 1898年にドイツがチャオチョウ (膠州) 湾を,イギリスがホンコン対岸のカオルーン (九龍) 半島を,翌年にフランスがコワンチョウ (広州) 湾を租借した場合のように,99年間に及ぶものもある。租借国の権利は条件の内容により異なるが,その領土主権は租貸国が保有し,対人主権は租借国が排他的に行使するのが通例である。長期にわたる租借地については,領土割譲の偽装であるとの学説もあった。しかし租借地は期限の到来により,また期限到来以前でも租借国の意思により租貸国に返還されうるので,法的に領土割譲とは区別される。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「租借地」の解説

租借地
そしゃくち

条約によって一国が他国の領域の一部を借りる場合,その地域を租借地という。租貸国の主権や租借期限の存在のため領土の割譲ではないが,租借国が独占的・排他的管轄権をもつため,実際には割譲とほぼ同様の効果をもった。日清戦争後の中国での各国の租借地が典型。日本もロシアが1898年(明治31)に獲得した旅順・大連の25年間の租借権を,日露講和条約および北京条約(満州に関する日清条約)によって譲り受けた(対華二十一カ条の要求によって99年間の租借に改め,日本の敗戦により事実上消滅)。またドイツの租借地である膠州湾租借権をベルサイユ条約によって一時継承したが,この権利はワシントン会議により中国に還付された。

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旺文社世界史事典 三訂版 「租借地」の解説

租借地
そしゃくち

列強が政治的・軍事的目的から,期限つきで借りた中国の重要地域
期限が長く,実質的には割譲したのと同じであった。1898年のドイツの膠 (こう) 州湾,ロシアの遼東半島(のち日本が継承),イギリスの威海衛と九竜半島,99年のフランスの広州湾の5か所。列強の経済的進出の拠点となり,中国の主権を侵害した。租借地には広大な後背地があり,列強は鉄道敷設権・鉱山採掘権などを獲得した。第二次世界大戦後九竜半島のみ香港の一部として残ったが,1997年の香港の中国返還とともに租借地はなくなった。

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旺文社日本史事典 三訂版 「租借地」の解説

租借地
そしゃくち

一国が他国からその領土の一部を借用した土地
日清戦争後,ドイツが膠州湾を99か年租借したのが最初で,ロシアが旅順・大連,イギリスが威海衛・九竜半島,フランスが広州湾を租借したが,実質は領土の割譲であった。日本も日露戦争後,旅順・大連の租借権を獲得し,1915(大正4)年の二十一カ条要求では,租借権の99か年延長を強要した。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「租借地」の解説

租借地(そしゃくち)

租界(そかい)

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