租借地(読み)そしゃくち(英語表記)leased territory

日本大百科全書(ニッポニカ)「租借地」の解説

租借地
そしゃくち
leased territory

ある国が条約に基づいて借り受けた他国領土の部分をいう。19世紀の末よりヨーロッパ列強と日本が、清(しん)国に要求して租借地を得た。まず1898年にドイツ膠州(こうしゅう)湾を、ロシア旅順(りょじゅん)・大連(だいれん)を、イギリス九竜(きゅうりゅう)半島と威海(いかい)を、フランスが広州湾借した。日露戦争後、日本はロシア租借地(関東州)の権利を取得した。また1919年のベルサイユ条約によってドイツ租借地の膠州湾を引き継いだ。租借国が租借地に対してもつ権利は、租借に関する個々の条約に基づくが、租借国が立法・行政・司法の全般にわたる統治権を行使しうる点で共通している。また、租借の期限も普通は99年と長期間であったため、租借は仮装の割譲であるといわれたが、割譲とは異なる。租貸国は潜在的な主権を維持し、租借国は租貸国の同意なくして租借地の地位を変更しえないからである。期限満了により、またそれ以前でも租借国の放棄によって、租貸国はすべての権利を回復する。その後、租借地は次々に返還され、1984年12月に中英共同宣言が調印され、1985年5月に発効し、1997年7月1日香港(ホンコン)が中国に返還されて英中の租借関係が終了した。また、ポルトガルの領土マカオも1999年12月に中国に返還された。

 ほかに特殊なものとして、アメリカが1903年キューバから租借したグアンタナモ湾岸がある。アメリカはこれを海軍基地として使用し、キューバ革命後のキューバ政府の返還要求には応じていない。2002年からはアフガニスタンやイラクで拘束された人の収容所として用いられ、グアンタナモ収容所とよばれている。

[太寿堂鼎・広部和也]

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デジタル大辞泉「租借地」の解説

そしゃく‐ち【租借地】

ある国が、他国から租借した土地。19世紀末から20世紀にかけて、中国に多くみられた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「租借地」の解説

租借地
そしゃくち
leased territory

国家間の合意によって一方の当事国 (租貸国) から他方の当事国 (租借国) に貸与された領土。租借は一定の期限を定めてなされる。たとえば,中国から 1898年にドイツがチャオチョウ (州) 湾を,イギリスがホンコン対岸のカオルーン (九龍) 半島を,翌年にフランスがコワンチョウ (広州) 湾を租借した場合のように,99年間に及ぶものもある。租借国の権利は条件の内容により異なるが,その領土主権は租貸国が保有し,対人主権は租借国が排他的に行使するのが通例である。長期にわたる租借地については,領土割譲の偽装であるとの学説もあった。しかし租借地は期限の到来により,また期限到来以前でも租借国の意思により租貸国に返還されうるので,法的に領土割譲とは区別される。

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百科事典マイペディア「租借地」の解説

租借地【そしゃくち】

一般に2国間の条約によって,一方の国(租貸国)により他方の国(租借国)に貸与される地域。近代中国に典型的にみられ,諸外国は一定地域を期限付で借り受け,そこで統治の全権を行使した。領土主権は中国に存したが,統治権の強さ,期間の長さ(25〜99年)および軍事的要地が多かったことから諸外国の侵略基地となり,この制度は事実上の領土割譲といわれた。膠州湾(ドイツ),関東州(ロシア,日本),威海(英国),広州湾(フランス)などがあったが,香港植民地の一部としての九竜(英国)が1997年に返還され,現存する租借地はなくなった。→租界香港返還
→関連項目植民地湛江長山列島青島

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旺文社世界史事典 三訂版「租借地」の解説

租借地
そしゃくち

列強が政治的・軍事的目的から,期限つきで借りた中国の重要地域
期限が長く,実質的には割譲したのと同じであった。1898年のドイツの膠 (こう) 州湾,ロシアの遼東半島(のち日本が継承),イギリスの威海衛と九竜半島,99年のフランスの広州湾の5か所。列強の経済的進出拠点となり,中国の主権を侵害した。租借地には広大な後背地があり,列強は鉄道敷設権・鉱山採掘権などを獲得した。第二次世界大戦後九竜半島のみ香港の一部として残ったが,1997年の香港の中国返還とともに租借地はなくなった。

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旺文社日本史事典 三訂版「租借地」の解説

租借地
そしゃくち

一国が他国からその領土の一部を借用した土地
日清戦争後,ドイツが膠州湾を99か年租借したのが最初で,ロシアが旅順・大連,イギリスが威海衛・九竜半島,フランスが広州湾を租借したが,実質は領土の割譲であった。日本も日露戦争後,旅順・大連の租借権を獲得し,1915(大正4)年の二十一カ条要求では,租借権の99か年延長を強要した。

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精選版 日本国語大辞典「租借地」の解説

そしゃく‐ち【租借地】

〘名〙 国家が特別の合意に基づき他国から租借した土地。一九世紀末から二〇世紀にかけて特に中国にみられた制度で、ドイツ(のち日本)の膠州湾、ロシア(のち日本)の旅順港・大連港、イギリスの九龍半島・威海衛、フランスの広州湾など。

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世界大百科事典 第2版「租借地」の解説

そしゃくち【租借地】

国家が領域の一部を特別の合意によって他の国家に貸す場合,この領域の一部を租借地という。また,貸した国家を租貸国,借りた国家を租借国,特別の合意を租借条約という。租借条約によって,一定の期限が定められる。租借国が租借地の統治権を行使しない場合と行使する場合とがある。前者は非政治的租借地,後者は政治的租借地である。1898年の条約でフランスがニジェール川沿いの土地を貨物陸揚げなどのためにイギリスから租借したのは,非政治的租借地の例である。

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