小国が礼をもって大国に事(つか)えること,また転じて勢力の強いものにつき従う行動様式をさす。《孟子》梁恵王章句下に,斉の宣王が隣国と交わる道を問うたのに対し,孟子は〈大を以て小に事うる(以大事小)者は天下を保(やす)んじ,小を以て大に事うる(以小事大)者は其の国を保んず〉と答えた故事に由来している。
朝鮮史では,李朝の対中国外交政策を事大主義と称する。1392年,高麗王朝に代わって李成桂が創建した李朝は,その前期には明,後期には清に対する〈以小事大〉の礼をもって国号と王位の承認を得て国内の統治権を強化し,定例的な朝貢使(燕行使)の派遣にともなう官貿易によって経済的利益を得,1592-98年に豊臣秀吉の侵略をうけたときは明軍の支援を得た。つまり中国との事大=宗属関係によって国土を安んじえた。朝鮮の日本および女真族との関係は,伉礼(こうれい)(対等の礼)による交隣関係であったが,女真族の清王朝が中国を支配すると事大=宗属関係に代わった。事大党と対立した開化派(独立党)は,1884年12月の甲申政変で清との事大関係からの独立をその政綱にかかげた。
→小中華思想
執筆者:姜 在 彦
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