朝鮮の近代的改革をめざして1884年の甲申政変,1894-95年の甲午改革を主導した政治家集団。独立党ともいう。一般に,甲申政変を主導した金玉均,朴泳孝,洪英植らを急進的開化派,甲午改革を主導した金弘集,金允植,魚允中,兪吉濬らを穏健的開化派という。清国との事大(宗属)関係に固執し旧体制を持続しようとした守旧派と対決し,奪権闘争によって君権変法を目ざしたのが急進的開化派であり,守旧派と妥協しながら漸進的に改良を積みあげようとしたのが穏健的開化派である。開化思想は18世紀以来の実学思想の流れを継ぎながら,清国の洋務運動,日本の明治維新の刺激をうけて形成され,朴趾源の孫朴珪寿を源流とする。彼の死後,開化派の形成に重要な役割を果たしたのは訳官呉慶錫(1831-79),漢医劉鴻基(1831-84),僧侶李東仁(?-1881)らであった。朝鮮における開化風潮を盛りあげた画期は,1881年に金允植が領選使となって38名の留学生を天津機器局に派遣したことと,同年の朴定陽,洪英植,魚允中ら12名の朝士および随員を含めた計62名の紳士遊覧団の日本視察であった。福沢諭吉は開化派の要請にこたえて門下生井上角五郎を派遣して朝鮮で最初の近代的な官報兼新聞《漢城旬報》の創刊(1883.10)に協力させ,また朝鮮人留学生を慶応義塾に受け入れた。しかし開化派の近代化運動は守旧派の厚い壁を打ち破ることができず,悲劇的な失敗を重ねた。甲申政変は3日天下に終わり,甲午改革も,三国干渉を背景にした朝鮮での日本勢力の後退にともなって失敗した。前者は急進的開化派が主導し,後者は穏健的開化派が主導したという変革主体の差はあっても,民衆的基盤のない〈上からの改革〉という共通性をもっている。開化思想が大衆の中に浸透するのは1890年代後半期の独立協会の運動と,そのメンバーによって創刊された《独立新聞》《皇城新聞》によるところが大きい。
執筆者:姜 在 彦
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朝鮮の李(り)朝末期における政治的党派。「開化」という語は日本の「文明開化」から輸入したものである。日本の「文明開化」が欧米文明の受容による近代化を意味したのに対し、朝鮮の「開化」は欧米文明の受容による近代化に加えて、当時の朝鮮が服属していた清(しん)からの独立という意味を含んでいた。開化派が明確に形成されたのは、壬午(じんご)軍乱(1882)における興宣(こうせん)大院君のクーデターが、日・清両軍の出兵によって鎮圧されて以降である(決定的役割を果たしたのは清軍)。このクーデターの失敗によって、対外政策をめぐる開国派と鎖国攘夷(じょうい)派の対立は開国派の勝利に終わった。しかし、これ以後、朝鮮に対する清の宗主権が強まったため、開国派は守旧派(事大党)と開化派(独立党)とに分裂した。守旧派は清との関係を朝鮮の外交の基軸に据える勢力で、清の洋務運動をモデルとした。開化派は清からの独立を目ざす勢力で、日本の明治維新をモデルに近代化を進めようとした。守旧派の人物としては金允植(きんいんしょく)、魚允中(ぎょいんちゅう)らが、開化派には金玉均(きんぎょくきん)、朴泳孝(ぼくえいこう)らがあげられる。金玉均らは福沢諭吉の影響を強く受けていた。開化派は1884年に清からの独立を目ざしてクーデターを試みたが失敗に終わった(甲申(こうしん)政変)。開化派の著作としては、朴泳孝『国王への上疏(じょうそ)』(1888)、兪吉濬(ゆきつしゅん)『西遊見聞』(1895)などがとくに有名である。
[原田 環]
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…1894年(甲午の年)から翌年にかけて行われた朝鮮の政治改革。甲午農民戦争を機に出兵した日本は,日清開戦の口実として朝鮮の内政改革を主張し,7月23日には王宮を占領して大院君を擁立,金弘集を首班とする開化派の政権を成立させた。新政権は会議機関として軍国機務処を設置し,相次いで近代化のための改革法令を発令した。…
…その間,閔氏政権も上からの近代化を推進するが,しかしそれは守旧派の抵抗で不徹底なものに終わり,むしろ閔氏政権の下で朝鮮の半植民地化が進行した。閔氏政権下で上からの近代化を推進したのは政府内の開化派であった。開化派は1870年代初めに金玉均らを中心に形成され,84年,彼らの中の急進派は近代的改革をめざして甲申政変を起こしたが失敗に終わった。…
※「開化派」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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