二兎を追う者は一兎をも得ず(読み)ニトヲオウモノハイットヲモエズ

デジタル大辞泉 の解説

二兎にともの一兎いっとをも

同時に違った二つの事をしようとすれば、結局どちらも成功しないというたとえ。西洋のことわざ。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

ことわざを知る辞典 の解説

二兎を追う者は一兎をも得ず

二つの目標を同時に追求しようとすると、結局、どちらも取り逃がしてしまうことのたとえ。

[使用例] 静「だからサ。本当は士官に成る気なんだけども、もし身体が悪くッてなれなかったら、動物学者に成るのサ。」文「そんなに両天秤を掛けたッていけるもんか。二兎を追う者は一兎を得ずッてェ事がある。どっちか一方ひとつめたまい!」[巌谷小波暑中休暇|1892]

[使用例] 観光旅行ならいざ知らず、短期間の研究という任務を帯びた小生の日常は、繁雑な神経の浪費からなるべく解放されていなくてはならないのです。〈略〉この上、君と子供とを身辺において、しかも研究に没頭することは、二兎を追うて一兎を得ざる結果になるおそれが十分にあります[岸田国士*ある夫婦の歴史|1951]

[解説] ヨーロッパで広く使われることわざの翻訳で、幕末にオランダ語、フランス語、英語などから並行的に入ってきたものと思われます。明治一〇年(1877)に「西洋諺草」に紹介されたのち、小学校の修身国語の教科書にも登場し、急速に普及していきます。江戸時代にも兎狩りは各地で行われていたので、この比喩日本人にもわかりやすく、十分な説得力を発揮したといえるでしょう。また、漢文の読み下し文式の訳で翻訳臭が消え、ほとんど西洋起源と意識されずに使われています。その一方で、古くから使われた「あぶはち取らず」は徐々に衰退し、今日ではほとんど耳にしなくなりました。

[類句] 虻蜂とらず

[対義] 一石二鳥一挙両得

〔英語〕If you run after two hares, you will catch neither.(二匹の野ウサギを追いかけると、どちらも捕らえられない)

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