二十五か条綱領(読み)にじゅうごかじょうこうりょう(英語表記)Programm der NSDAP vom 24, Februar 1920 ドイツ語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「二十五か条綱領」の意味・わかりやすい解説

二十五か条綱領
にじゅうごかじょうこうりょう
Programm der NSDAP vom 24, Februar 1920 ドイツ語

1920年2月に制定されたナチス国民社会主義ドイツ労働者党)の綱領ドイツ労働者党(ナチス党の前身)は19年1月5日に創立された際に「原則」を定めたが、ヒトラーが参加したのち、党が急速に発展したので新しい綱領が必要となった。古い党員フェーダーGottfried Feder(1883―1941)の利子奴隷打破説、エッカートDietrich Eckart(1868―1923)の反ユダヤ主義などの主張を採用しつつ、ドレクスラーAnton Drexler(1884―1942)とヒトラーなどで作成した。20年2月24日、ミュンヘンの大酒場ホーフブロイハウスでの公開大集会でこの綱領が公布され、会場に集まった左翼系聴衆の猛烈な妨害を排除しながら採決された。

 綱領は、領土的要求(大ドイツ国家の建設―第1条、植民地の要求―第3条)、国家主義的要求(強力な中央権力と強大な国民軍との創設―第22条、第25条、ユダヤ人排斥―第4~第8条、反対派への厳しい取締り―第23条)のほかに、利子奴隷制の打破―第11条、戦時利得の没収―第12条、トラスト国有化―第13条、大企業利得の国民への分配―第14条、地代廃止―第17条、老齢手当の拡充―第15条、母子の保護―第21条など社会政策を要求し、大デパートの市町村有化、その小企業者への貸与―第16条、公共団体の物資発注における小企業者優先―第16条、身分制的職業代表議会の設置―第25条など中産階級維持策の要求を掲げた。前文で「暫定綱領」とされたが、のちに不可変とされ、ただし土地の無償没収の要求はユダヤ人土地投機業者に対してだけ適用されると訂正された(1928年4月13日のヒトラーの声明)。綱領はさまざまな立場にたつ要求の寄せ集めで、党は必要に応じてあれこれの部分を強調しながら、綱領にとらわれずに活動した。

村瀬興雄

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「二十五か条綱領」の解説

二十五カ条綱領(にじゅうごかじょうこうりょう)

初期ナチスの雑多な要求を寄せ集めた綱領。1920年2月24日に採択された。大ドイツの建設,講和条約破棄,ドイツ民族のための土地の要求,ユダヤ人追放迫害など,のちにヒトラーが実現に努力した国粋的な政策や,反マルクス主義的,反議会主義的要求を掲げている。「金利奴隷制」の廃止を主張したフェーダーの主張も採用しながらドレクスラーがヒトラーの協力を得て起草した。トラストの国有化,土地改革などの反資本主義的な要求はその後ヒトラーによって無視された。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

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