五性各別(読み)ゴショウカクベツ

デジタル大辞泉 「五性各別」の意味・読み・例文・類語

ごしょう‐かくべつ〔ゴシヤウ‐〕【五性各別】

法相宗で、人の五性は決定的であって、それを変えることはできないと説くもの。特に、仏になれない者を立てる点で、可能性をもつとする天台宗と対立した。

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精選版 日本国語大辞典 「五性各別」の意味・読み・例文・類語

ごしょう‐かくべつゴシャウ‥【五性各別】

  1. 〘 名詞 〙 仏語。法相宗(ほっそうしゅう)の説で、一切の衆生を先天的に決定されている本性から、菩薩定性、独覚定性、声聞定性、三乗不定性、無性有情五種に分けるもの。先天的に成仏できるもの、できないものを示したところに特色がある。
    1. [初出の実例]「新院百首釈教の心をよめる 他縁大乗 五性各別 我身にも仏のたねのありなしは花のかつらをかけてこそしれ」(出典:教長集(1178‐80頃))

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「五性各別」の意味・わかりやすい解説

五性各別
ごしょうかくべつ

法相宗の術語。五性とは,菩薩定性,縁覚定性,声聞定性,不定性,無性の5つである。これらのうち,前3者は,それぞれ,仏果辟支仏 (びゃくしぶつ) 果,阿羅漢果を得ることが定まっているものである。第4はそれが決っていないもの,第5は永遠に迷界に沈んでいるものとする。無始以来,生物 (有情) の第八識のなかに5種類の種子が存するので,この5つの区別が成立するという。この見解は,あらゆるものが成仏するとする天台宗と対立している。

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世界大百科事典(旧版)内の五性各別の言及

【仏教】より

…仏果を得ることは文字や学解によるのではなく,字(真言)・印(印相)・形(曼陀羅)などで表現され,如来の言葉である真言陀羅尼を念誦し,観修することで即身成仏できると説く空海の教えは,彼の南都諸宗に対する妥協的態度や加持祈禱の容認と相まって,貴族や地方の豪族や民衆のなかに急速にひろまった。法相宗学を主流とした南都仏教が,成仏の可否は人間の素質によるという〈五性各別〉を説いたのに対して,天台・真言の平安仏教は〈一切皆成〉,すなわち素質や能力に関係なく,すべての人間が成仏できるとの一乗主義を説き,これも平安仏教の新しい特色だった。こうして,平安時代,化外の地域とされた東北地方まで天台・真言の僧が布教の足跡をのばし,仏教はほぼ日本全域にひろまった。…

※「五性各別」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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