中国の律における基本的刑罰の笞杖徒流死(ちじょうずるし)の五刑を、日本の律では、五罪と改めて受け入れた。したがって、たとえば中国で笞刑とよんだものを、笞罪と称したのである。日本では古くより刑罰を「つみ」と称する伝統があったので、これによって、五刑を五罪と改めたのであろう。笞、杖はいずれも棒で打つ刑であって、その数(笞は10~50、杖は60~100)によってそれぞれ5等ある。なお笞は細く、杖は太かった。徒は一定の労働に服さしめる。流は配所に移送して1年間労務に服さしめたあと、その地に本籍を移させる。死には絞と斬(ざん)とがあったが、斬のほうが重いとされた。刑のことを罪とよんだことは、江戸時代でも死刑の一種を死罪と称したように、明治のごく初年まで続く。
[石井良助]
五刑とも。律に規定された主刑。笞(ち)・杖(じょう)・徒(ず)・流(る)・死の5種があり,笞・杖・徒は各5等,流は遠・中・近の3等,死は絞・斬の2等の計20等にわけられる。五罪が確実に認められるのは701年(大宝元)に成立した大宝律令においてだが,「隋書」倭国伝には,すでに死・流・杖を記し,「日本書紀」天武5年(676)8月条には死・流・徒を記すなど,7世紀を通じて日本の固有法のうえに中国律の五刑の刑罰体系がしだいに継受されていった。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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