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亡霊婚 ぼうれいこんghost marriage

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

亡霊婚
ぼうれいこん
ghost marriage

冥婚ともいう。父系出自集団を社会単位とするヌエル族社会で行なわれる婚姻の一形態で,死者である男性の弟あるいはその他の親族男性が死者の名義で死者の妻と婚姻する。婚姻の優先的規制の一つの型。この婚姻によって出生した子供の社会的父は死者であり,その子供は死者の系譜を継承する。

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世界大百科事典 第2版の解説

ぼうれいこん【亡霊婚 ghost marriage】

死者と生者あるいは死者どうしの婚姻。多くは未婚のままか後継者なしで死んだ者のために,財産相続祖先祭祀が途絶えることのないように行われる。アフリカの牧畜民ヌエル族では,男子はみな自分の財産の持分を得,結婚して新しいリネージを創設する権利をもっている。しかし,男があとつぎを持つ前に死んだ場合,その近親者の一人が,共有財産のなかから花嫁代償を支払って,死者の名義で妻を迎える。生まれた子は,この同棲者ではなく死者の子としての権利・義務をもつ。

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大辞林 第三版の解説

ぼうれいこん【亡霊婚】

社会的に制度化された、死者と生者の、あるいは死者どうしの婚姻。父系社会における血縁の連続性の確保や死霊の慰撫とみなされる。中国やアフリカにみられる。冥婚めいこん

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

亡霊婚
ぼうれいこん
ghost marriage

婚姻形態の一種で、男子の後継者も、それを生んでくれる妻も残さずに男が死んだ場合、彼の兄弟や近親者が、死んだ男の名前で妻をめとること。西アフリカ、南スーダンの牧畜民ヌエルなどが有名であるが、アジアにもみられる。その結婚から生まれた子供の社会的父親は、死者の亡霊だと考えられており、死者の子としての権利・義務をもつ。[加藤 泰]

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世界大百科事典内の亡霊婚の言及

【婚姻】より

…つまり,これらの同性者間の結婚においては,性的要素はまったく含まれておらず,財産ないし地位の相続,継承の道筋をつけるために行われている。さらに,〈夫〉や〈妻〉が子どもの場合の幼児婚や,生者でなく死者の場合,つまり亡霊婚がアフリカや東アジアで報告されている。これらも,相続・継承者を得たり,あるいは死後の祭祀を確実にし,死者の霊を満足させるために行われる。…

【父母】より

…この意味において母系社会における社会学的父は母方オジであって,生物学的父とずれを見せる。またアフリカ東部のヌア族の間で行われている亡霊婚は両者のずれを示すもう一つの好例である。ヌアでは結婚後子どもをつくらずに死亡した男がいた場合,その妻が死んだ夫の弟と性交渉をもって子どもをつくる。…

【レビレート】より

…この場合新たな結婚式をあげず,“死者と結婚している”ことになっている兄の妻と同棲し,生まれてくる子も亡兄の子として扱われる。これに類縁の形態として亡霊婚がある。これは未婚の死者の親族が死者の名義で結婚し,死者の後継ぎを得るもので,弟が亡兄の名義で結婚した場合には,レビレートの極端な形態とみなすこともできる。…

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