改訂新版 世界大百科事典 「レビレート」の意味・わかりやすい解説
レビレート
levirate
弟が亡兄の身代りとなってその妻を引き継ぐ慣習。狭義には,弟は亡兄の単なる代理にとどまる。この場合新たな結婚式をあげず,“死者と結婚している”ことになっている兄の妻と同棲し,生まれてくる子も亡兄の子として扱われる。これに類縁の形態として亡霊婚がある。これは未婚の死者の親族が死者の名義で結婚し,死者の後継ぎを得るもので,弟が亡兄の名義で結婚した場合には,レビレートの極端な形態とみなすこともできる。両者とも典型的な例はアフリカの父系社会に多くみられる。そのおもな目的は,死者の妻子の扶養や無子の亡夫に子をもうけ,財産相続と祖先祭祀を確保するほか,個人間にとどまらず集団間に及んでいる婚姻による紐帯を夫の死後も維持存続させることにある。他方,広義のレビレートは,弟が亡兄の妻への権利義務を相続する,いわゆる未亡人相続や,単に未亡人の再婚の相手が義弟であるというものも含めると,世界中に広く分布している。この場合,生まれた子は亡兄でなく弟の子として扱われる。日本でも,オトウトナオリ,逆縁などと称されて好んで行われていた。これは家業の運営,遺子やヨメの処遇,血筋や姻縁関係の維持など,イエの円滑な存続に好都合であったからである。民族誌的にみて,これを行っているところは多いが,沖縄や中国のように避けたり嫌う社会もある。
→ソロレート
執筆者:末成 道男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報