人工肉(読み)ジンコウニク

デジタル大辞泉 「人工肉」の意味・読み・例文・類語

じんこう‐にく【人工肉】

大豆や小麦のたんぱく質を主原料とする肉状の食品。植物性たんぱく質の補給や肉加工食品の増量材に用いる。

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知恵蔵 「人工肉」の解説

人工肉

牛や豚、鶏などの肉の味や食感を人工的に作りだした加工食品。大きく分けて、エンドウ豆などの植物を材料にして作る方法と、動物から採取した細胞を培養する方法があり、後者は「培養肉」とも呼ばれている。国際連合の予測では、世界の人口は、現在の約77億人から2050年には97億人になると予想されており、今後の人口増加による食糧不足が懸念されている。また、新興国の経済成長に伴い、食肉需要の急増が予想されることや、牛や豚など家畜の飼育には、餌となる牧草や穀物を栽培するために大量の水や広大な土地が必要になるという環境対策の面からも、肉の代用品の開発が急務となっている。
米国では、以前からベンチャー企業などが人工肉の開発に力を入れている。数年前から人工肉のパテや、それらを使ったハンバーガーが販売されるようになり、菜食主義者や宗教上の理由で肉を食べない人たちに受け入れられている。2019年に入ってからは、米ファストフード大手のバーガーキングマクドナルドも、エンドウ豆など植物由来の原料で作ったパテを使ったハンバーガーの販売に乗り出した。
近年は、中国でも植物由来の材料を使った人工肉の開発競争が激しくなっている。日本でも人工肉の開発が進み、コンビニエンスストアなどで植物由来の人工肉を使った加工品が販売されるようになった。大手食品会社やベンチャー企業は、大学などと共同で培養肉の実用化に向けた研究を進めている。また、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などは、将来の月面滞在での調理、提供を想定したメニューとして、家畜の細胞を人工培養した肉を使ったステーキなどを候補として検討している。

(南 文枝 ライター/2019年)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「人工肉」の意味・わかりやすい解説

人工肉
じんこうにく

大豆あるいは小麦のタンパク質など、主として植物性タンパク質を材料としてつくった肉状の食品の総称。植物性タンパク質はそのままの形状では食肉のように繊維状を呈していないので、これを繊維状に加工することが考えられ、その完成によって人工肉をつくることが可能になった。植物性タンパク質を繊維状にする方法としてはいくつかあるが、簡単には、いったん溶解したタンパク質を細いノズルから押し出し、これを繊維状に固まらせることによってつくられる。溶解のためにはタンパク質をアルカリ液に溶かすことが、固めるためには酸液に溶解したタンパク質を押し出すのが通常である。こうしてつくった繊維状タンパク質はばらばらであるので、これを圧縮して肉状にする。また味も肉のようではなく、ほとんどないといってもよいくらいであるので、各種の肉の味を人工的につけることが可能である。

 人工肉は、料理用としてそのまま、あるいはフライやから揚げ状に加工したものが利用されるが、多くは、ハンバーグステーキやミンチボールといったものの肉の増量材、あるいはソーセージ、コンビーフ状食品などにも使用される。そのままでは脂肪分の濃厚さがないので、コンビーフなどでは動物性の脂肪が添加されることもある。一般にひき肉などに混入して調理品にすると、口あたりがソフトになり、ボリュームも出るので、かなり広い範囲で利用されている。人工肉そのものは、肉という名称でも栄養的には植物性タンパク質である。動物性脂肪の入らないものでは、健康食品として扱われている場合もある。

[河野友美・山口米子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「人工肉」の解説

人工肉
ジンコウニク
simulated meat

人造肉ともいう.植物タンパク質食品の一形態.脱脂大豆の水抽出液から得られるタンパク質成分を加工・整形したもの.水産加工品,畜肉加工品,乳菓,パン,菓子,インスタント食品などの増量剤,改質剤として利用される.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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