九三式魚雷を改造して乗員1人が潜望鏡と簡単な航法装置を頼りに操縦、乗員もろとも敵艦に体当たりする特攻兵器。生還の可能性が絶無である点で、それ以前の特殊潜航艇とは違っている。制空・制海権をアメリカ側に奪われた1944年(昭和19)2月、(マルロク)計画の名で試作開始、7月完成と同時に水中特攻本部が設置され、新兵器は「回天(かいてん)」と命名された。同年11月20日、中部太平洋ウルシー環礁のアメリカ海軍泊地に5基の回天が発進、タンカー1隻を撃沈したのを最初に沖縄作戦などに参加、アメリカ輸送船団に対してかなりの戦果をあげた。しかし搭載潜水艦が次々に失われたため、航空機による特攻作戦のような大規模なものにはならなかった。回天要員約2000人中、戦死86人、殉職16人の犠牲者を出している。
同種の水中特攻兵器に「蛟龍(こうりゅう)」「海龍」があり、また水上特攻兵器としては、艇首に爆装した高速ボート「震洋」がある。
[前田哲男]
『防衛庁戦史室著『海軍軍戦備〔2〕』(1975・朝雲新聞社)』▽『日本戦没学生記念会編『きけわだつみのこえ』(『和田稔の日記』)(岩波文庫)』▽『島尾敏雄著『出発は遂に訪れず』(1973・新潮社)』
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