特殊潜航艇(読み)トクシュセンコウテイ

デジタル大辞泉 「特殊潜航艇」の意味・読み・例文・類語

とくしゅ‐せんこうてい〔‐センカウテイ〕【特殊潜航艇】

旧日本海軍太平洋戦争で用いた小型潜航艇母艦で目的地近くまで運ばれてから作戦任務に就く。昭和16年(1941)の真珠湾、その翌年シドニーなどの攻撃に参加。

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共同通信ニュース用語解説 「特殊潜航艇」の解説

特殊潜航艇

旧日本海軍が秘密裏に開発した小型の潜水艇。2人乗りで、全長約24メートル、排水量46トン。母艦から発進し、装備した2本の魚雷敵艦に向けて発射するとされた。1942年5月のシドニー湾攻撃は3隻で出撃し、発射した魚雷で連合軍兵士らが死亡。潜航艇3隻も沈没し、搭乗員6人が死亡した。マダガスカルにも出撃した。

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精選版 日本国語大辞典 「特殊潜航艇」の意味・読み・例文・類語

とくしゅ‐せんこうてい‥センカウテイ【特殊潜航艇】

  1. 〘 名詞 〙 旧日本海軍が太平洋戦争で使用した小型潜航艇の称。乗員二~五人で母艦から発進し、魚雷攻撃を行なった。
    1. [初出の実例]「第一図は、魚雷の航跡と、爆破瞬間の敵鑑を描いて、特殊潜航艇そのものは、描かなかった」(出典:海軍(1942)〈岩田豊雄〉霹靂)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「特殊潜航艇」の意味・わかりやすい解説

特殊潜航艇
とくしゅせんこうてい

日本海軍が対米艦隊決戦に備えて極秘裏に開発した小型潜航艇。機密保持上、甲標的とよばれた。当初の計画では、母艦に搭載して決戦海域に運ばれ、船尾のトンネルから急速発進して敵主力艦に肉薄、魚雷攻撃にあたるとされた。敵の意表をつく奇襲兵器であるためその存在は明らかにされず、1938年(昭和13)、これを搭載する母艦の千歳(ちとせ)など4隻が完成したときも水上機母艦の名称が与えられたほどだった。甲型(約60隻建造)、乙・丙型(乙型とその量産型75隻)、丁型(蛟龍(こうりゅう)110隻)の3型があり、全没排水量46~59.3トン、全長23.9~26.2メートル、最大深度100メートル、搭乗員数2~5人、魚雷数2、水中速力6~16ノットまたは20~50分。甲標的の存在が世間に知られたのは真珠湾攻撃作戦に参加した際で、5隻が大型潜水艦に搭載されて湾口近くに進出、湾内に侵入して空からの攻撃に呼応した。全艇撃沈されるか自沈し戦果はなかったが、乗組員10人は軍神の称号を与えられ(のち1人は捕虜となっていたことが判明)、このときの発表で特殊潜航艇の語が初めて用いられた。

 このほか、オーストラリア・シドニー港やマダガスカル島ディエゴ・スアレスの同時奇襲にも従事したが、この作戦でも5隻全部が沈められた。甲型に続き局地防衛用の乙・丙型、さらに本土決戦に備えて、5人乗りの丁型(蛟龍)が量産された。最初から特攻目的につくられた人間魚雷とは設計思想は異なっていたが、実際上は特攻兵器と変わらない運用がされた。

前田哲男

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百科事典マイペディア 「特殊潜航艇」の意味・わかりやすい解説

特殊潜航艇【とくしゅせんこうてい】

旧日本海軍の奇襲用小型潜航艇。母艦に積載され,戦闘海域で発進,敵主力艦に肉迫して魚雷攻撃を行う。排水量46トン,全長24m,直径1.85m,45cm発射管2をもち,電池推進で水中24ノット,乗員2名。1939年から秘密裏に建造,1941年真珠湾(しんじゅわん)攻撃に5隻が参加,1942年シドニー,ディエゴスアレスを同時急襲した。戦争末期には防御用に改造され蛟竜(こうりゅう)(60トン)と称された。→回天

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「特殊潜航艇」の意味・わかりやすい解説

特殊潜航艇
とくしゅせんこうてい
midget submarine

戦闘用の小型潜水艇。豆潜水艦とも通称される。乗組員が1~5人程度のものをいう。その小ささを利用して敵の軍港近くまで大型潜水艦によって運ばれ,潜入,攻撃するか,沿岸防衛を目的とした。第2次世界大戦では,イギリス,ドイツ,イタリア,日本が装備。日本海軍は真珠湾攻撃で2人乗りの特殊潜航艇を5隻使ったが,なんらの戦果もなかった。 1943年9月にイギリス海軍の4人乗りのX艇がノルウェーのフィヨルドでドイツ戦艦『テルピッツ』を大破させたほかには,みるべき戦果はなく,各国が開発,建造,訓練などにかけた費用や,労力には引合わなかった。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「特殊潜航艇」の解説

特殊潜航艇
とくしゅせんこうてい

日本海軍が太平洋戦争で使用した魚雷発射管2門をもつ2人乗り小型潜水艇。もとは洋上の艦隊決戦で水上の母艦から投下されて発進,敵艦隊を襲撃しようとした秘密兵器。開戦が近づくと搭乗員たちは潜水艦に搭載して敵港湾を奇襲するよう主張し,真珠湾攻撃に5隻が使用された。その後1942年(昭和17)5月にシドニーで3隻,ディエゴスワレスで2隻,43年10~12月にガダルカナル島ルンガ泊地で8隻が使用された。

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世界大百科事典(旧版)内の特殊潜航艇の言及

【特別攻撃隊】より

…またこの攻撃を特攻といい,命中率をよくし,大きな破壊威力を発揮するのがねらいであった。 1941年12月ハワイ真珠湾攻撃のとき,特殊潜航艇(秘密保持上,〈甲標的〉と公称。この攻撃に使われた甲型は2人乗り,46トン,魚雷2本搭載)で臨時編成した特別攻撃隊が湾内に潜入攻撃し帰還しなかったが,これが特攻隊の名称を用いた最初のものである。…

※「特殊潜航艇」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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