出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
広津柳浪(りゅうろう)の短編小説。1896年(明治29)7月、『文芸倶楽部(くらぶ)』に発表、のち「柳浪叢書(そうしょ)」前編(1909)所収。1895年の深刻(悲惨)小説から一転、96年柳浪は『河内屋(かわちや)』『信濃屋(しなのや)』『浅瀬の波』などの心中物を多く発表した。なかでも遊里に生きる娼妓(しょうぎ)吉里(よしざと)の心中の動機を主題とした『今戸心中』は傑作といわれる。吉里の情人で好男子の平田、店を手放し、妻子と別れてまでも吉里に通いつめる古着屋美濃屋(みのや)善吉の実直さ、そしてその貞操と同情のはざまにあやしく揺れ動く吉里の女心は、遊廓(ゆうかく)における人情の機微に直接触れていて、また吉原(よしわら)界隈(かいわい)の風俗描写の巧みさと相まって、みごとな一場を結んでいる。
[尾形国治]
『『明治文学全集19 広津柳浪集』(1965・筑摩書房)』
初夢に見るものの中で、縁起のよいとされているものを順に挙げた句。[補説]一に富士山、二に愛鷹あしたか山、三に初茄子の値段と、駿河国で高いものを並べた句ともいわれる。...
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