代償請求権(読み)だいしょうせいきゅうけん

改訂新版 世界大百科事典 「代償請求権」の意味・わかりやすい解説

代償請求権 (だいしょうせいきゅうけん)

たとえば,債務の目的物を第三者が滅失または毀損せしめたため,債務の履行不能を生ずると同時に債務者が第三者に対する損害賠償請求権を取得したり保険金請求権を取得した場合,あるいは売買の目的たる土地が公用徴収されたため,売主が補償金請求権を取得した場合のように,履行不能を生ぜしめたのと同一の原因によって債務者が履行の目的物の代償となる利益を取得した場合には,債権者はその代償の譲渡を請求しうると考えられている。これを代償請求権といい,公平の観念から肯定されている(民法536条2項但書はこの法理のあらわれである)。ただし判例は,履行不能により債権者がこうむった損害を限度として代償請求権の行使を認めている。履行不能につき債務者の責めに帰すべき事由がないことを要するか否かについては立法例も学説も分かれている(フランス民法1303条は肯定,ドイツ民法281条は否定)。代償請求権は,債務者の本来の給付に代わるべきものであるから,債権者の反対給付と対価的関係に立ち,その間に同時履行の抗弁権が成立する。なお,特定物売買では契約と同時に所有権が買主に移転するとして民法534条1項のいわゆる〈債権者主義〉(〈危険負担〉の項参照)を〈所有者主義〉だと解する見解からは,代償請求権を認める余地はない。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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