抗弁権(読み)こうべんけん

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

抗弁権
こうべんけん

請求権の行使に対してその作用を阻止することのできる効力をもつ権利。権利の行使に対する防御という意味で反対権ともいう。ただし、民事訴訟法上の攻撃防御方法の一種としての抗弁とは異なる。

 抗弁権は延期的抗弁権と永久的抗弁権とに区別される。前者は、たとえば、同時履行の抗弁権(民法533条)、保証人の催告の抗弁権(同法452条)および検索の抗弁権(同法453条)などであり、一時的に履行を拒絶して請求権の効力を一時的に阻止する機能を果たす。後者は、永久的に履行を拒絶して請求権の効力を阻止する機能を果たすが、日本の民法上このような抗弁権を認めうるかについては、問題が残されている。抗弁権の行使は、請求権の裁判外および裁判上の行使に対して、同じく裁判外および裁判上において行使されうる。また、抗弁権は時効にかからないとする学説がある(抗弁権の永久性)。なお、連帯保証の場合には、保証人の債権者に対する催告の抗弁権や検索の抗弁権は認められない(民法454条)。

[淡路剛久]

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精選版 日本国語大辞典の解説

こうべん‐けん カウベン‥【抗弁権】

〘名〙 相手方の請求権の行使に対して、一時的にこれを拒否できる権利。同時履行の抗弁権、催告の抗弁権、検索の抗弁権などがある。

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百科事典マイペディアの解説

抗弁権【こうべんけん】

請求権(請求)の行使に対抗する民法上の権利双務契約における〈同時履行の抗弁権〉や,債権者から債務の履行を求められた保証人が,まず主たる債務者への履行の催告を抗弁できる〈催告の抗弁権〉などがある。抗弁権は相手の請求権そのものを否定するものではなく,請求権の行使の阻止を正当化するものである。→抗弁
→関連項目補充性連帯保証

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世界大百科事典 第2版の解説

こうべんけん【抗弁権】

請求権の行使に対して,その作用を阻止しうる効力をもつ私法上の権利。たとえば,売買契約当事者である売主買主には,それぞれ同時履行の抗弁権〉(民法533条)が認められている。すなわち,主が目的物を提供することなしに代金を請求してきた場合には,買主は目的物の引渡しがなされるまで代金支払いを拒むことができ,反対に,買主が代金の提供なしに売主に目的物の引渡しを求めてきたときは,売主は代金の支払いがなされるまで引渡しを拒むことができるのである。

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世界大百科事典内の抗弁権の言及

【同時履行の抗弁権】より

…たとえば,売買契約をした売主が,買主のほうから代金を持参するまでは目的物を引き渡さないと主張するように,双務契約(双務契約・片務契約)の当事者は,相手方がその債務の履行の提供(債務の履行をするために自分でできる限りのことをして債権者の受領を求めること)をするまでは,自分の債務を履行しないと主張することができる(民法533条)。このような主張をする権利を同時履行の抗弁権という。双務契約では双方の債務が互いに対価関係に立っていることを考慮し,公平のために認められた制度である。…

※「抗弁権」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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