曲山人(きょくさんじん)作の人情本。角書(つのがき)「小三(こさん)金五郎」。3編9巻。1831~34年(天保2~5)刊。初め歌川国次の絵で出され、のち歌川国直の絵で再版されて、後者のほうが流布した。作者も「曲山人補綴(ほてい)」となっているので、曲山人が巷間(こうかん)行われていた写本を補ったものと考えられるが、確証はない。仮名屋金五郎と幼なじみの小三が波瀾(はらん)のすえ結ばれるが、義理に迫られた小三が自害するという悲話。勧善懲悪風の作が多かった当時の人情本のなかでは、話のおもしろさと情緒あふれる描写によって出色の当り作となる。人情本中の代表作の一つでもある。続編に『清談若緑』(刊年未詳)があり、曲山人作となっているが、偽作である。
[武藤元昭]
『『日本名著全集15 人情本集』(1928・同書刊行会)』▽『鈴木重三著「仮名文章娘節用 初版本の発見」(『絵本と浮世絵 江戸出版文化の考察』所収・1979・美術出版社)』
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…別号は司馬山人,三文舎自楽,文盲短斎など。はじめ,筑波仙橘(せんきつ)と称して曲亭馬琴の読本の筆耕に携わっていたが,1831年(天保2)人情本としては異色な題材ともいうべき武家の世界の義理人情を描いた佳作《仮名文章娘節用(かなまじりむすめせつよう)》を発表して,戯作文壇に名を知られることになった。その後,江戸下町の町娘の恋を描いて生彩に富む風俗小説《娘消息》(1834)を発表したが,36年ごろ早世したと推定される。…
※「仮名文章娘節用」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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