六訂版 家庭医学大全科 「仮面ぶどう膜炎」の解説
仮面ぶどう膜炎(悪性腫瘍、とくに悪性リンパ腫)
かめんぶどうまくえん(あくせいしゅよう、とくにあくせいリンパしゅ)
Masquerade syndromes (Malignant tumor, especially lymphoma)
(眼の病気)
どんな病気か
さまざまな眼内腫瘍により、あたかもぶどう膜炎のような眼内炎症を引き起こしている場合を指します。これが「仮面」といわれるゆえんです。本来のぶどう膜炎と異なり、炎症による症状でないため、ぶどう膜炎でよく治療に使用されるステロイド薬にはあまり反応しません。
原因不明のぶどう膜炎のなかで、ステロイド薬に反応があまりよくなく、長期に炎症が持続する場合には、腫瘍が原因となる「仮面ぶどう膜炎」である可能性があります。しかし、一般的な頻度としては、まれな病気と考えられます。
原因は何か
眼内腫瘍のなかでも、とくに成人の悪性リンパ腫、
たとえば悪性リンパ腫の場合、全身の悪性リンパ腫が眼内に転移してくる場合と、眼から生じてくる原発性の場合の2通りがあります。眼に発生する場合には、脳神経系にも生じていることもあります。この場合、脳神経系の症状が先に出てくる場合と、眼の症状が先に出てくる場合とがあります。
症状の現れ方
症状として、小児では
検査と診断
悪性黒色腫や網膜芽細胞腫の場合は、
これらの検査を行い、疑わしい場合は各専門の医師(血液内科、脳外科など)と連携し、確定診断に努めてゆきます。
治療の方法
診断がついた場合、原因となる腫瘍そのものに対する治療を行います。眼内悪性リンパ腫では放射線治療の効果が期待できます。近年では抗悪性腫瘍薬のメトトレキサートの硝子体内投与の効果が報告されています。他の部位からの転移性の悪性リンパ腫である場合は、化学療法が主になります。しかし、原発性の眼内悪性リンパ腫の予後は大変不良です。
血液内科、脳外科などの医師と眼科医との連携のもとに、治療することが重要です。
尾崎 志郎
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報