網膜芽細胞腫(読み)もうまくがさいぼうしゅ(英語表記)retinoblastoma

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

網膜芽細胞腫
もうまくがさいぼうしゅ
retinoblastoma

乳幼児の網膜に発生する悪性腫瘍。日本では眼内悪性腫瘍のなかで最も多く,最近さらに増加の傾向がある。発病は1~2歳が多く,4歳になると極度に減少し,7歳以上では例外的になる。両眼性は 20~30%程度。常染色体性優性遺伝であるが,散発例も多い。子供の眼が光る (猫眼) ことで母親が気づくことが多い。腫瘍が大きくなると,眼圧が高くなり,緑内障状態となって,眼球も充血,腫脹する。さらに大きくなると,眼球壁を破壊して眼窩内に広がり,脳に浸潤したり,頸部や肝臓などに転移する。治療は,早期に眼球を摘出する。両眼性の場合は,重症眼を摘出し,軽症なほうの眼には放射線療法などを行う。

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百科事典マイペディアの解説

網膜芽細胞腫【もうまくがさいぼうしゅ】

0〜2歳の乳幼児の眼底に発生する悪性腫瘍。片目性のものが両眼性よりもやや多い。症状は白色瞳孔斜視などで,腫瘍が大きくなると瞳孔がネコの目のように黄色く光る。主に視神経を浸潤して脳に転移する。早期には放射線照射,凍結手術,レーザー光凝固などの保存的治療が可能だが,大きくなった場合は眼球摘出が必要。
→関連項目癌抑制遺伝子小児癌

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家庭医学館の解説

もうまくがさいぼうしゅ【網膜芽細胞腫】

 網膜(もうまく)に発生する悪性腫瘍(あくせいしゅよう)で、乳幼児におこります。
 初めは、白色瞳孔はくしょくどうこう)で気づかれることがあり、斜視(しゃし)や眼球位置の異常がみられることもあります。視力低下、角膜(かくまく)の混濁などをともなうこともあります。
●治療
 両目か片方の目だけか、腫瘍の位置や大きさによって、眼球摘出や保存的治療が行なわれます。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

網膜芽細胞腫
もうまくがさいぼうしゅ

乳幼児の目の網膜に発生する悪性腫瘍(しゅよう)。小児癌(がん)のうちでは白血病、脳腫瘍、神経芽腫に次いで多く、わが国では眼内に原発する悪性腫瘍中もっとも多い。全体の約30%は両眼に発生し、また約35~45%は次世代に遺伝する。この病気の初期は患児が幼いこともあって、まったく気づかれないことが多く、腫瘍がかなり大きくなって瞳孔(どうこう)がネコの目のように白く光ってみえる白色瞳孔(黒内障性猫眼(ねこめ))になって初めて家族が異常に気づくことが多い。しかし、ときには目の位置の異常(斜視)や目の視線が定まらないといった初期症状を示すこともあり、眼底検査で初期の腫瘍が発見されることがある。したがって、斜視あるいは白色瞳孔の子供はすぐ眼科医による眼底検査を受ける必要がある。
 治療としては、進行している場合は手術によって眼球を摘出する。また初期の場合は、放射線を照射したり、光凝固を施したりして腫瘍を破壊し、眼球を保存して視力を残す保存的治療法が行われる。放置すると脳または全身に転移して死に至るが、適切な治療を行えば約90%は生存し、また保存的治療法も約80%は成功する。したがって、早期発見と専門医による早期治療がもっともたいせつである。[箕田健生]

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六訂版 家庭医学大全科の解説

網膜芽細胞腫
もうまくがさいぼうしゅ
Retinoblastoma
(子どもの病気)

どのような病気か

 眼の網膜にできるがんで、ほとんどが3歳以内に発症します。網膜は眼の奥にあり光の像を結ぶフィルムに相当するところです。ここにがんができると視力が低下しますが、赤ちゃんの場合は視力の状態がよくわかりません。網膜の白い腫瘍が光に反射して、ネコの眼のように白く光って見えることで発見されることがよくあります。

 病気が進行すると眼球の外へ広がったり、視神経から脳に転移することが多く、リンパ節や骨などに転移することもあります。このがんの多くは片側の眼だけにできますが、両眼にできることもあり、両眼のものは遺伝することがわかっています。片側のもののなかにも遺伝に関係したものが一部あります。遺伝性の網膜芽細胞腫は、治療後かなりたってから他の悪性腫瘍を発生する確率が高くなります。

症状の現れ方

 初期の段階ではあまり症状がありませんが、ある程度進行すると暗いところでネコの眼のように(ひとみ)が光って見えます。網膜の中心にがんができると物を見つめることができなくなり、瞳の位置がずれる斜視(しゃし)になることもあります。そのほか結膜の充血、視力の低下や、緑内障(りょくないしょう)を起こして眼を痛がることもあります。脳に転移すると頭痛や嘔吐を起こします。

治療の方法

 腫瘍が小さく視力が十分に残っている場合には、眼球をそのままにして治療を行います。早期の場合、局所治療(レーザー光凝固(ひかりぎょうこ)や冷凍凝固)だけですむこともあります。それ以外は、抗がん薬による治療で腫瘍を縮小させてから局所治療をします。

 がんが大きくなっている場合や視力がほとんど残っていない場合は、眼球を摘出することになります。その後、抗がん薬や放射線による治療を行います。摘出されたあとは義眼を装着することで外観が保たれます。両眼性の場合は進行の遅いほうの眼球をできるだけ残し、片側だけを摘出します。

 発見が遅れてがんが眼球の外にまで広がらなければ、生命はまず助かります。

病気に気づいたらどうする

 眼がネコのように光って見える時は、急いで眼科を受診してください。遺伝性があるので、家族に患者がいる場合は子どもの眼の様子を時々観察します。小児がんのなかでは治癒率が高いがんなので、初期のうちに発見することが望まれます。

片岡 哲

網膜芽細胞腫
もうまくがさいぼうしゅ
Retinoblastoma
(眼の病気)

どんな病気か

 眼のなかにできる悪性の腫瘍(しゅよう)で、ほとんどが5歳以下の乳幼児期に起こります。1万5000~2万人に1人の割合で発症するとされ、両眼性と片眼性があります。悪性の腫瘍ですから、視機能だけでなく命にも関わる病気です。

原因は何か

 遺伝性と非遺伝性がありますが、どちらもがん抑制遺伝子であるRB遺伝子の異常です。遺伝性は両眼性が多くて発症年齢は低く、非遺伝性は片眼性が多くて発症年齢は高いという特徴があります。

症状の現れ方

 自分で症状を訴えることがない乳幼児の病気なので、たいていは周囲の人によって気づかれます。最も多いのが白色瞳孔(はくしょくどうこう)で、瞳が白色あるいは黄白色に輝いて見えることで気づかれます(キャッツアイ、ネコの眼と表現される)。次いで多いのが斜視(しゃし)です。斜視は片眼の視力が著しく低下して、両眼視が崩れることによって起こります。

検査と診断

 多くの場合、眼底検査で典型的な腫瘍を認めるため、診断は簡単です。しかし、時に網膜剥離(もうまくはくり)、強い眼内炎症、緑内障(りょくないしょう)などを伴って、腫瘍を肉眼では確認できないこともあります。その場合、診断はそれほど簡単ではなく、超音波、X線、CT、MRIなどの画像診断を参考にして判断することになります。

治療の方法

 治療にはさまざまな選択肢があり、治療に対する考え方も変遷を重ねてきています。

 大きく分けて、眼球摘出術と眼球保存療法があります。眼球保存療法には放射線照射、網膜光凝固術(もうまくひかりぎょうこじゅつ)(コラム)、冷凍凝固術、化学療法(抗がん薬の投与)、温熱療法などがあります。

 腫瘍の大きさや数、眼外への浸潤(しんじゅん)の有無、両眼性か片眼性かなどにより治療方法が選択されます。最近の傾向としては、眼球摘出をなるべく避け、可能なかぎり眼球保存療法で治そうという考え方が強まってきています。

病気に気づいたらどうする

 網膜芽細胞腫は、めったにある病気ではなく、予後も重大という、眼科のなかでもかなり特殊な病気です。一般の眼科医には手に余る病気ですから、専門的に扱っている眼科医に診断と治療を(ゆだ)ねるべきです。

 病気を受け入れることができず、民間療法などに走って命を危うくするようなことだけは避けましょう。

河野 眞一郎

網膜芽細胞腫
もうまくがさいぼうしゅ
Retinoblastoma
(遺伝的要因による疾患)

どんな病気か

 両眼性の網膜芽細胞腫は、平均して生後7カ月で起こります。片眼性では、平均して生後20カ月で起こります。日本人では1万5000人に1人発症し、そのうち遺伝性は40%です。松果体腫瘍(しょうかたいしゅよう)、放射線治療による二次がんとして骨肉腫(こつにくしゅ)などが起こることがあります。

原因は何か

 RB遺伝子の変異です。

検査と診断

 遺伝子検査で患者さんに変異の見つかる割合は70~80%です。患者さんにとって、遺伝子検査の意義はあまりありません。孤発例(家系にはみられない)、片眼性の場合、変異が認められれば反対の眼にも発症の可能性がありますが、変異が特定されなくても遺伝性は否定できないので、反対の眼の観察を怠らないことが大切です。

 孤発例と考えられる場合でも、その親の眼底検査で自然治癒のあったことが疑われる場合があり、遺伝性かどうかの診断に参考となることがあります。発症前遺伝子診断の適切な年齢は出生1カ月以内です。

 遺伝子変異が見つかった人、あるいは家系内でリスクが高いと考えられる人については、結婚前後にキャリア診断が行われることもありますが、遺伝カウンセラーとの相談をすすめます。

治療と管理方針

 家系内でリスクが高いと考えられる人については、出産前なら妊産婦検診時の胎児眼球超音波検査でわかることがあります。生後1週間以内~5歳まで、年に一度の眼底検査を続けます。片眼のみ発症した人の反対の眼についても同じです。

小杉 眞司

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

世界大百科事典内の網膜芽細胞腫の言及

【癌】より

…その半分は常染色体で優性,1/3が常染色体で劣性,1/6が性染色体と連鎖した(X‐連鎖)病気である。常染色体優性の例としては,多発性神経繊維腫瘍,レックリングハウゼン病,網膜芽細胞腫(一部),家族性多発性大腸ポリープ癌,ガードナー症候群などをあげることができる。腫瘍の発生が単一遺伝子座の遺伝子に支配されていて,その遺伝子の持主には大多数に腫瘍が発生するのである。…

【黒内障】より

…現在では病名としては単独で用いられることはなく,現存する病名は,黒内障性猫眼amaurotic cat’s eyeと家族性黒内障性白痴amaurotic familial idiocyのみである。前者は網膜芽細胞腫retinoblastomaのある時期に瞳孔の中が光ることを指し,後者は代謝異常疾患の一つであるリピドーシスlipidosisの眼症状を主として指す病名である。【小林 義治】。…

【小児癌】より

…小児癌には,成人にはほとんどみられることのない特有なものと,成人にも小児にもみられるものとがある。前者には神経芽腫,ウイルムス腫瘍,網膜芽細胞腫,肝芽腫などがあり,後者には白血病,悪性リンパ腫,脳腫瘍などがある。しかし,どちらともいえないものや,また同じ病名でも,成人と小児とでは病型が異なり,症状や治療法の違うものが少なくない。…

※「網膜芽細胞腫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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