朝日日本歴史人物事典 「伏屋素狄」の解説
伏屋素狄
生年:延享4.12.1(1748.1.1)
江戸後期の蘭方医。号は琴坂,通称は万町権之助。河内国日置荘(堺市)の吉村正常の3男。和泉国南池田村万町(和泉市)の酒造業伏屋家の養子となり,分家を立てた。20歳ごろから約30年間漢方医として堺,次いで大坂で開業していたが,『解体新書』や『西説内科撰要』を読み,また大坂の蘭方医橋本宗吉や大矢尚斎 らとの交遊によって蘭方医学に転向した。実証的な西洋医学に開眼し,寛政12(1800)年大坂の葭島の刑場で尚斎や各務文献らと遺体を解剖,また種々の動物で解剖や生理学的実験を行った。そこで得た知見などを記載した『和蘭医話』2冊を文化2(1805)年に刊行。この書ではカエルの心臓が摘出後もなお動くことや,ブタなどの腎臓の尿を生成する濾過作用を観察しており,その科学的実証主義は高く評価できる。<参考文献>内山孝一「明治前日本生理学史」(日本学士院『明治前日本医学史』3巻),中野操『大坂蘭学史話』
(中山沃)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報