低酸素性脳症(読み)テイサンソセイノウショウ

デジタル大辞泉 「低酸素性脳症」の意味・読み・例文・類語

ていさんそせい‐のうしょう〔‐ナウシヤウ〕【低酸素性脳症】

低酸素脳症

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「低酸素性脳症」の意味・わかりやすい解説

低酸素性脳症
ていさんそせいのうしょう

脳への酸素供給が不足し低酸素状態になるためにおこる脳症で、中枢神経障害を伴う。無酸素性脳症も同義として扱われる。しばしば血圧低下や虚血を伴うことがあり、これは低酸素性虚血性脳症(HIE:hypoxic ischemic encephalopathy)と別称される。脳が酸素欠乏に陥ると、中枢神経系のなかで影響を受けやすい海馬の特定領域や大脳皮質が侵される。軽度のものでは、判断力と集中力の低下や脱力感をきたし、頭重感やめまいなども生じる。重度のものは意識消失や昏睡(こんすい)に陥って脳死状態となり、さらに呼吸麻痺(まひ)や心停止などのために死に至る場合もある。

 HIEが出生時にみられる場合は、新生児低酸素性虚血性脳症とよばれる。これは母体内で、あるいは分娩(ぶんべん)中になんらかの原因で新生児の脳への酸素供給が滞り、仮死をきたし、低酸素や虚血が原因となって中枢神経障害をおこす。全身が低酸素状態となり虚血に陥ると、血液は優先的に脳へ送られて他臓器への血流は減少するため、それぞれの臓器が傷害を受け多臓器不全をきたす。さらに進行すると脳にも傷害が加わる。しだいに重症化し、筋緊張の異常、意識レベルの低下、けいれん異常呼吸、心拍異常、瞳孔(どうこう)の散大などへ移行する。こうした低酸素虚血を伴う新生児が脳性麻痺などの後遺症を残さないための治療として、呼吸循環管理や薬物治療に加えて幹細胞を移植する臨床研究も始まっている。

[編集部]

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