狂言の曲名。脇狂言,百姓物。年貢を納めに上京する越後の百姓と佐渡の百姓が道づれになる。越後の百姓が〈佐渡には狐がいないであろう〉というと,佐渡の百姓は〈狐は沢山いる〉と言い張り,刀を賭ける。実は佐渡に狐はいないので,狐を知らない佐渡の百姓は都に着くと領主の館の奏者(取次ぎの役人)に賄賂をつかい,狐の姿形を教わっておく。両人はそろって奏者の前に出,裁断を仰ぐと奏者は〈佐渡に狐はいる〉と答える。越後の百姓は驚いて狐の姿形を問う。佐渡の百姓はまごつきながらも,奏者の助けで,争いに勝つ。が,館を出てから負けた越後の百姓から狐の鳴き声を聞かれて答えられず,賭物の刀を奪い返される。登場は佐渡の百姓,越後の百姓,奏者の3人で,佐渡の百姓がシテ。一般に脇狂言は祝言性と歌舞の要素が中心だが,本曲は劇的対立や笑いの要素が強く,異色である。江戸時代に入ってからの作かとも推定される。
執筆者:羽田 昶
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
狂言の曲名。脇(わき)狂言・百姓物(ひゃくしょうもの)。在京領主のもとへ年貢を持って上洛(じょうらく)する越後(えちご)の百姓と佐渡の百姓(シテ)とが道連れになり、佐渡に狐がいる・いないを論じて双方譲らない。そこで、互いの刀を賭(か)けて真偽の判定を都の奏者(取次役)にゆだねることにする。本当は狐がいないのに「いる」と主張した佐渡の百姓は、賄賂(わいろ)を使ってあらかじめ奏者から狐の特徴を聞いたうえで判定に臨む。しかし、にわか仕込みのため、いざ越後の百姓から狐の姿形を聞かれてもしどろもどろ。それでも奏者から身ぶり手ぶりで教えられてなんとか切り抜け、判定に勝つ。ところが、外へ出てから狐の鳴き声を尋ねられて答えられず、賭け物の刀を取り返されてしまう。役人の収賄に風刺性も感じられるが、見どころはむしろ、奏者が佐渡の百姓になんとか教えようとする箇所の3人の演技のおかしさにある。脇狂言としてのめでたさは感じられない。
[林 和利]
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