家庭医学館 「使いすぎ症候群」の解説
つかいすぎしょうこうぐん【使いすぎ症候群 Overuse Syndrome】
スポーツ障害では、筋肉の使いすぎによる筋肉、腱(けん)、腱付着部の炎症である使いすぎ症候群がもっともよくみられます。
この症候群は、とくに発育途上にある子どもにおこりやすいため、過度な運動には注意が必要です。
●種類
使いすぎ症候群としておこる障害には、つぎのようなものがあります。
■腱炎(けんえん)
腱をくり返し伸ばしたために、腱の線維に微小な断裂(切れ目)ができ、炎症が生じる障害です。
腱がかたくて弱い人のアキレス腱、肩の腱板(けんばん)、上腕二頭筋(じょうわんにとうきん)、膝蓋骨(しつがいこつ)におこりやすいものです。
■神経炎(しんけいえん)
骨周辺の神経のまさつやひっかかりによって生じた神経の炎症です。
■軟骨(なんこつ)の摩耗(まもう)・断裂(だんれつ)
衝撃や摩擦(まさつ)が加わったための軟骨の損傷です。関節軟骨や膝(ひざ)の半月板(はんげつばん)におこります。
■離断性骨軟骨炎(りだんせいこつなんこつえん)
打撲やまさつがくり返し加わったために、骨の端が小さな骨と軟骨とに分離して遊離体(ゆうりたい)となったものです。
骨片(こっぺん)がはがれ、関節の中に落ち込んで動く関節鼠(かんせつねずみ)(関節遊離体(「関節遊離体(関節鼠)」))の状態になることもあります。
■コンパートメント症候群(しょうこうぐん)
ヒラメ筋ならヒラメ筋といった筋肉の腱膜(けんまく)などで区分けされた1つの区画(コンパートメント)に大量の血液が流れ込み、その筋肉が腫(は)れた状態です。
コンパートメント内で筋肉の内圧が上昇して筋肉や神経を圧迫し、筋肉の緊迫感・無感覚・筋力低下などが現われます。激しいトレーニングを行なっているときに下腿(かたい)(ふくらはぎなど)におこることが多いものです。
■疲労骨折(ひろうこっせつ)(「骨折とは」の疲労骨折)
骨の表面にできる細かいひびで、オーバーロード(筋力、持久性、柔軟性を高めるための通常より強く長時間のトレーニング)をくり返すとおこります。
ランニングやエアロビクスを行なう人の足やすねにおこりやすいものです。
[症状]
この症候群では、障害を受けた部位に痛み、腫れ、熱感、圧痛(押すと強くなる痛み)などがおこります。これらの症状は、たいていは運動をしているときにおこり、運動をやめると消えるのが特徴です。
[治療]
RIC(安静、氷冷、圧迫(「打撲(打ち身)」))が治療の基本です。E(挙上)が必要になることもあります。
マッサージ、抗炎症薬や鎮痛薬(ちんつうやく)の服用が必要なケースもあります。
コンパートメント症候群では緊急手術で開放し、内圧を下げる必要が生じることもあります。
[予防]
メリハリのある運動を行なうこと、十分なウォームアップと休息をとることで、予防できます。