信濃布(読み)シナノヌノ

デジタル大辞泉 「信濃布」の意味・読み・例文・類語

しなの‐ぬの【濃布】

科布しなぬの

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精選版 日本国語大辞典 「信濃布」の意味・読み・例文・類語

しなの‐ぬの【信濃布】

〘名〙 信濃国長野県)などで産するシナノキの皮をさらして、細く糸に割いて織った布。布目あらく艷があり、色はやや赤く黒みがある。祿、布施諷誦の料としても用いられた。科布(しなぬの)
延喜式(927)三〇「凡大政官並出納諸司季祿布、以信濃之」
※宇治拾遺(1221頃)一五「長(たけ)高き僧の、鬼のごとくなるが、信濃布を衣にき」

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改訂新版 世界大百科事典 「信濃布」の意味・わかりやすい解説

信濃布 (しなのぬの)

信濃で生産された布。信濃の語源一説にはシナノキにちなんだものといわれるように,古代の信濃にはシナノキがたくさん自生していたのであろう。信濃布というのは本来このシナノキの繊維からつくる粗くて丈夫な布(榀布(しなぬの))であるが,そのほか信濃では畠に栽培する麻や苧(からむし)からつくる高級の布も生産されていた。信濃の年貢は古代以来,輸送の便利もあってかほとんどが軽量の布で京進された。律令時代は調布2万端,庸布4万端,商布約7500端の貢進となっている。平安時代には貴族社会でもてはやされ,当時の公卿の日記にしばしば〈信濃布〉の名がでてくる。12世紀ごろ,水内(みのち)郡の太田荘から高陽院(かやいん)政所に高級な〈細美布〉が年貢として進上されているが,この言葉は江戸時代になってもこの周辺の麻関係の史料に散見される。布を主要な運上物とする信濃では,伊那春近領の宮田村などに御布所がおかれ,万雑事(まんぞうじ)が免除されるかわりに田地町別に細布20段,在家別に中布1段を納めていた。
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