先んずれば人を制す(読み)サキンズレバヒトヲセイス

デジタル大辞泉 「先んずれば人を制す」の意味・読み・例文・類語

さきんずればひとせい

《「史記項羽本紀から》他人よりも先に事を行えば、有利な立場に立てる。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

故事成語を知る辞典 「先んずれば人を制す」の解説

先んずれば人を制す

人よりも先にものごとを行えば、有利な立場に立つことができる、という教え。

[使用例] 先生が主税ちからに対する信用の点も、情愛のほども、子のごとく、弟のごときものであることさえ分ったので、先んずれば人を制すで、ぴたりとその口をおさえたのであろう[泉鏡花*婦系図|1907]

[使用例] 突然まぶたを開いた父が私の手を握り、「忠、先んずれば人を制す。遅れれば人に制せられる。負けるなよ」と言って目を閉じた[南部忠平紺碧の空に仰ぐ感激日章旗|1988]

[由来] 「史記―項羽紀」に載せる、いんとうという人物のことば。紀元前二世紀の終わり、しん王朝に対する反乱が各地で勃発したとき、地方長官をしていた殷通は、自分も反乱を起こそうと考えて、地元の実力者のこうりょうに相談を持ちかけました。「先んずればすなわち人を制す、おくるればすなわち人の制する所とる(先手を取れば相手を抑え込むことができるし、後手に回れば相手に抑え込まれることになる)」とは、そのときのことば。早く決起しないと、有利に戦いを進められないと判断したのでした。

[解説] ❶殷通の素早い決断は称賛されるべきですが、実際には項梁の方が役者が上でした。殷通をだまし討ちにして、軍隊を乗っ取ってしまうのです。結局、殷通は「後るれば則ち人の制する所と為る」となってしまったわけで、運命の皮肉というべきでしょう。❷「先手必勝」「早い者勝ち」といった慣用句と、同じ意味を表す故事成語。ただ、生きるか死ぬかの争いの中から生まれた故事成語だけに、より切迫した雰囲気を醸し出すのに適しています。

〔異形〕先んずる時は人を制す。

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ことわざを知る辞典 「先んずれば人を制す」の解説

先んずれば人を制す

人よりも先に事を行えば、有利な立場に立つことができる。先手を取ることができれば、相手を制することができる。先んずる時は人を制す。

[使用例] 突然まぶたを開いた父が私の手を握り、「忠、先んずれば人を制す。遅れれば人に制せられる。負けるなよ」と言って目を閉じた[南部忠平*紺碧の空に仰ぐ感激の日章旗|1988]

[解説] 「史記―項羽本紀」にあることば。

英語〕The early bird catches the worm.(早起きの鳥が虫を捕らえる)

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