先物為替(読み)サキモノカワセ(その他表記)forward exchange

翻訳|forward exchange

日本大百科全書(ニッポニカ) 「先物為替」の意味・わかりやすい解説

先物為替
さきものかわせ
forward exchange

現物直物(じきもの))為替に対する用語で、受渡し時期(将来の一定期日または期間)、外貨の種類、金額、為替相場などの取引条件を決めた外国為替のことをいい、そのような外国為替取引の約束を先物為替予約という。予約期間は通常6か月以内であるが、6か月を超える長期予約もまれにはある。期限がくると約束の条件に従って為替の受け渡しが行われる。先物為替に用いられる為替相場を先物為替相場という。先物為替は、為替相場の変動に伴うリスクを回避する方法として考案された制度である。その用途としては、貿易業者が輸出契約時から輸出手形決済までの間の為替リスク回避の目的で輸出成約と同時に為替銀行に対して予約するケースや、金利裁定取引の場合に投資してから資金を回収するまでの間の為替リスク回避を目的に投資時点で予約するケースなどがある。なお、リスク回避とは別に、為替投機や為替銀行間の持高調整、資金調整にも利用される。先物取引は直物取引と同時に交錯して行われることが多く(スワップ取引)、今日では通貨オプション取引とともにデリバティブ(金融派生商品)取引の中核となっている。

[土屋六郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「先物為替」の意味・わかりやすい解説

先物為替
さきものがわせ
forward exchange

外国為替取引で受渡しの時点がある将来の一定期日もしくは一定期間内に行われることが約束された為替。具体的には,銀行間取引では取引成約の翌日より3営業日以降,対顧客取引では翌営業日以降を受渡日とする外国為替である。通常先物為替取引は,為替リスクを回避するために行われ,受渡方法により確定日渡し outright forwardとオプション渡し option forwardの2つに大きく分けられる。前者は順月確定日渡し (予約締結日の数ヵ月後の当日が受渡日) と特定日渡し (将来の特定日が受渡日) に,後者は暦月渡し (将来の特定の暦月中であればいつでも実行可能) ,順月渡し (予約締結日の数ヵ月後の1ヵ月期間内であれば実行可能) ,特定期間渡し (任意の特定期間内であれば実行可能) に分けられる。

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世界大百科事典(旧版)内の先物為替の言及

【外国為替】より

…日本の輸入業者などによる対外決済に際し,為替銀行が外貨建手段を売る場合も,主としてこうした金利要因が加味されて,それぞれ異なる為替相場が適用される。 以上は具体的な対外決済手段に即した外国為替の種類であるが,外国為替をより抽象的に考え,その売買契約成立日から実行日までの期間によって区別すると,直物(ないし現物)為替と先物為替に分けられる(直物為替・先物為替)。日本では,為替銀行の顧客との間の先物売買契約を為替予約といい,その現実の受渡しを予約の実行と呼んでいる。…

【為替相場】より

…外国為替銀行が外国為替を顧客から安く買って高く売ることによって収益をあげる以上,内貨建てで考えて売相場が買相場を上まわることはない。また外国為替には,外国為替と自国通貨の受渡しが契約と同時または数日中に行われる直物(じきもの)為替と,契約後の一定期日に行われる先物(さきもの)為替とがある(直物為替・先物為替)。直物為替に適用される為替相場が直物相場,先物為替に適用される為替相場が先物相場である。…

【直物為替・先物為替】より

…外国為替には,売買契約と同時または数日中に外国為替と自国通貨の受渡しが行われる直物為替と,契約後の一定期日に受渡しが行われる先物為替がある。これら二つの相場(直物相場,先物相場)には,通常,差があるが,この差を直先(じきさき)スプレッドという。…

※「先物為替」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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